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僕がスタンフォード大学に出向してからも、僕と詩織は遠距離恋愛を楽しんでいた。今は無料通話アプリを使い海外ともビデオチャットを楽しむことが出来る。僕等は毎日の何気ない日常の一コマやお互いの医療技術のことを話していた。僕等が一つだけ不満だったのは、二人であの橋の上での日の出を見られないことだった。
一年が経ち、僕は一度も帰国出来ないでいた。僕の研究は暗礁に乗り上げていて毎日多忙を極めていたのだ。
そして突然、詩織と連絡が取れなくなった。ビデオチャットを掛けても詩織が出てくれない。テキストメッセージを送っても既読にもならない。その状態は一週間続いて、流石に心配になった僕は彼女の職場に直接連絡をしようと考えていた時に詩織からテキストメッセージが送られて来た。
しかしそれは衝撃的な内容だった。
「達也さん、連絡出来てなくてごめんなさい」
「私は他に好きな人が出来ました。婚約は解消させて下さい」
「これまで、本当にありがとう。さようなら」
僕は直ぐに彼女に連絡を取ろうとした。しかし既に電話もSNSもブロックされていて連絡が出来なかった。
僕は安曇大学病院で彼女の同僚の梶原徹に電話をした。
「やあ、徹。ちょっと飯島先生に連絡を取りたいんだけど」
しかし徹の声に僕は衝撃を受けてしまった。
「ああ、達也か。飯島先生は一週間前に病院を退職されたぞ」
既に彼女は病院を辞めているなんて・・なんで?
しかし、僕には多忙な研究が在り、帰国して彼女に真実を確認することが出来なかった。結局、彼女への想いも断ち切れないまま、僕は自分の研究に没頭するしか無かった。
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