シューティング・スターは一つだけ?

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 初恋だった。  陣内 このみ(じんない このみ)は、高校2年の夏、初めて恋に落ちた。  転入生の、多久島 功(たくしま いさお)。  頭が良くて、物腰が柔らかで、明るくて……。  彼がこのみと同じ吹奏楽部に入部した時は、胸が高鳴った。  パートは、ホルン。  温かな音色は、優しい彼にピッタリだと思った。  部活が同じだと、話す機会はいくらでもある。  帰り道で一緒になることもあった。  だが、彼の前にいざ出ると、途端にうまく喋れなくなった。  それでも沈黙が怖くて、このみはひっきりなしに話し続けた。 「陣内って、おもしろいな」  笑顔で、功はそう言ってくれた。  やがて、彼には他に好きな人がいるらしいという噂が流れた。  相手は、陸上部のエース。  とてもかなう相手じゃない。  このみは、告白を諦めた。  この恋に、蓋をした。
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