私がひろった男

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 「旦那捨てたいんだよね。優しいけどいざって時に気が利かないし、仕事でなにかあったらすぐへこむしめんどくさい。時々家を出たくなる時がある」  友達のユウが一年前に結婚したばかりの旦那の愚痴を言うのは珍しいことではなかった。付き合っているときからちょっとしたことで愚痴を言っていたユウだったが、結局は彼の優しさになじみ気持ちを修正する。今まで何十回も繰り返してきたことだ。  私も慣れていた。月一で会ってご飯を食べたり映画を見に行ったり、ドライブに行ったりするのだがその時は必ず旦那の愚痴がセットだ。  「はいはい」と聞き流せてはいるが二十代半ばで彼氏すらいない私からすれば面白くなく、幼いうらやましさを持ってしまう内容だ。きっと他の独身の友達もそう思うだろう。   ユウは派手でどちらかというと高飛車な性格だ。しかしその分姉御肌なところがあるので男女共に友達が多く、結婚してからも男友達とは飲みに行く仲だ。その事はユウの旦那のショウタも知っていることで気兼ねはないと言っているが、本当のところはわからない。  妻が他の男と飲み歩くなどやましいことがなくても気持ちのいいものではないだろうと他人の私は思うのだが。  「あーあ、結婚早かったかなぁ」  せっかく駅前にできたおしゃれなカフェに来ているというのに、ユウは不謹慎なことを言って頬杖を突く。派手な赤のネイルが頬に添えられる。それは赤い口紅と合わさっていい画になった。  派手顔の美人だから派手な色が似あうのだ。学生の頃はユウといればよくナンパもされたものだ。左手の結婚指輪がなければまだ声はかけられるだろうか、とぼんやり思いながらお冷が入ったコップに移っている自分の顔を見た。  「そんなこと言ってぇ、ダメでしょ。ミツルさんはユウのこと好きなんだし。結婚して一年だしマンネリしているだけでしょ」  私の顔はつまらない。自分でも思うが不細工ではないにしても美人でなくかわいくもないのは確かだ。加えて今言ったこともとてもつまらない。こんな答えは学生でもいえる言葉だ。  二十六の女ならもっとましな言葉が出てもよさそうなものだ。    
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