知られざる兵士の遺書

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知られざる兵士の遺書

父上様、母上様、そして姉上様、美麗、お元気ですか。 私は大日本帝国長山部隊の兵士として、今まさにオーストラリア軍と戦っております。 敵はその、武力に置いて優っておりますが、我等は大和魂で歯を食いしばって頑張っております。 戦友の伊藤は敵の猛攻により、立派にお國の為に天寿を全ういたしました。 後は、中野、山田、中村、そして私だけが村からの生き残りで有ります。 山田と中村はマラリアで、もう持たないと思います、山田と中村の家族には、立派な最後だったとお伝え下さい。 父上様へ 長年のご愛護に感謝しております。 私の中では父上様に、肩車をされて祭に行った時が、どうした訳かこの頃盛んに思い出します。 思えば、幼い私には、とても、楽しいひとときでした、父上様が私に買ってくれた本土のラムネの味が思い出に残っております、とても冷たく、美味しゅうございました。 本当に今までありがとうございます。 母上様へ お身体は大丈夫ですか。 私は身体の弱い母上様の事が気掛かりです。 どうか御自愛下さい。 思えば母上の事を一番夢に見ます。 大日本帝国軍人としては、女々しくお想いでしょが、こればっかりは、致し方無いと思います。 どうか、お元気で父上様と共に長生きして下さい。 今の私には、この祈りだけしか出来ませんが、心より深く想っております。 姉上様へ 嫁ぎ先はどうですか、義兄様は優しくしてくれますか。 姉上様はいつも優しい笑顔で私達、弟妹に接してくれて居ました。 姉上様の優しさを私は決して忘れません。 義兄様と平和で楽しい家庭を気付いて下さい。 美麗へ いや、ランビへ 兄は、はるか南方の小島で、頑張って戦っております。 ランビの優しい顔が見たいです。 ランビの美しい顔が見たいです。 ランビと一緒にまた遊びたいです。 ランビにまた、タカイタカイをしてあげたいです。 ランビはもう五年生になったのですね。 もう、タカイタカイの年頃では無いですね。 でも、兄には、まだまだ小さいランビです。 兄の事を忘れないで下さい。 兄は、ランビの事を決して忘れません。 父上様、母上様、姉上様、美麗様。 私は明日総攻撃を致します。 キット戦死をするでしょう(原文ママ)。 でも、悲しまないで下さい、私は天より父上様、母上様、姉上様、美麗を見守っております。 父上様、母上様、姉上様、美麗様。 逢いたいです、とても逢いたいです。 出来れば、飛んで帰りたいです。 皆様とまた一緒に夕食の楽しい団欒を囲みたいです。 怖いです。 怖くてたまりません。(原文ママ) でも、私は大日本帝国軍人で有ります。 決して恥ずかしい死に方は致しません。 高砂族の英雄として死を選びます。 父上様、母上様、姉上様、美麗様、お元気で生きて下さい。 さようなら。 大日本帝国高砂義勇軍 第二連隊・第一小隊 青木一夫 一等兵事ラウラ・オリナス 高砂義勇軍一等兵(原文ママ) 昭和十八年十二月八日午前三時ニューギニア塹壕にて。
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