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入れたけれど
「せ、先生…」
「あなた達は隠すのが下手ですね。いいえ、声が大きいというのが欠点でしょうか。あなた達は三人集まると耳打ちが通常の会話になると知っておいた方が良いです」
現れた影はスーヴィ先生だった。
「あなた達の会話は聞こえていましたよ。私たちの会話を聞いているのも知っていました」
「え、えぇ…」
「ラディスク先生はお優しい方なのであの場ではあなた達を見逃してくださいましたが…今日中庭にガルラ二人…ローブ・ガリンジャーとキュル・マミワがいた為あなた達を見逃すことが出来なくなりました」
なんで分かったのだろう。俺たちは…こっそりと、周りに人がいないことを確認して出てきた。
「なんで、分かったんですか先生…」
「あなた達はちゃんと睡眠を取っている生徒のようですね。最古に教えて差し上げましょう。私は動物たちと一緒に見回りをしています。それは…扉の前の時でも同じです。中庭にはカラビアスに手伝ってもらっています」
確かに…確かに!中庭には誰もいなかったが、カラビアスはいた。カラビアスは暗闇でも夜目が効き、素早く動け、喋れるのだ。
「カ、ラビアス…迂闊だった…」
早く思い出してそれも作戦に入れればよかったのだ。やはり、あの作戦には穴があった。
穴しかなかった。
「いいですか、罰則は一週間図書館掃除で済ませてあげますから、早く部屋に帰りなさい」
一週間図書館掃除なんて絶対にやりたくない、でも、先生に見つかったら帰るという話だったのだ。あんまり問題は無い。…掃除はやりたくないけど。見つかるならピーター先生がよかった。先生は好きだけどやっぱり罪が多い。(…罪とは、スーヴィ先生が課せてくる罰則が辛すぎてみんなから罪と言われているのだ。何故罪かは知らない。罰じゃないのか)
「…わかりました、ありがとうございます先生」
そう返事をして終わらせようとしたところグランドが声を上げた。
「先生…僕達に何かを隠してませんか?」
「…はい?」
「盗み聞きをしてるのを知っていたらな分かるはずです。僕達は先生たちがルルーシェ先生が体調を崩していた理由を聞いていることも知っているはずです。僕達は、話していた内容…変わらずの像を調べに来ました」
そういえば…グランドに念押ししておくのを忘れた。だからこんなにも話していくのだ。
「生徒に、何も話さ、ずに先生達だ、けで解決す、るのは、悪い事だと思います。だって…一大事には、何も、出来ないと、僕は…僕は…!」
ぷるぷると震え出すとグランドは大きく後ろに反り返る。そうすると瞬く間に月明かりに照らされ、毛並みが輝く銀色の狼へと変身した。唸り声を上げながら狼は図書館の窓を破り出ていく。
「…いいでしょう。グランド・アテーナー・パリキシルは一週間ではなく一ヶ月です。修理費も負担させましょう。あなた達は帰りなさい」
先生は割れた窓を見てはぁとため息をつく。
「…そうですね、先生」
俺は、意見が変わった。そうだなグランド、一大事が一番危ないな、そう思ったからお前の味方をするよ。
「先生、俺は危険なことが一番嫌なんです」
この服装だってそうだ。母から昔から言われてきた、男は喧嘩に明け暮れる毎日だが女は毎日寝ているだけでいい。あなたも女になりなさいと言われてきた。喧嘩は危険だ。危険なことは俺は、人生で一度も味わいたくない。
「バラキカルト!」
バラキカルト、俺が知っている呪文の中で一番威力が強い。母が教えてくれた呪文で、バラキカルトを受けた箇所が痺れ、動かなくなるのだ。
よそ見をしていた先生の腕に当たったらしく右腕がぶらりと垂れていた。これで利き腕は使えない。利き腕が使えないとなると魔法は
かけにくくなる。
「っ…ローブ・ガリンジャー。あなたは…」
「キュル、早く行ってくれ、勘は当たるんだろ?早く本を取りに行くんだ!ここは俺に任せて」
「…っ分かった!」
素早いキュルが図書館の奥に行くとスーヴィ先生が睨みつけてくる。
「…あなた達生徒には危ない真似はさせられません、あなた達はこの問題が終わるまで寮内に軟禁することをカクチュアル校長に交渉することにします」
「構いませんよ、俺たちは一番安全な場所にいるってことじゃないですか。嬉しいことです」
「…それは、母親の教育ですか?」
「何故そんなことを聞くんですか?」
「子供の教育に響くのは母親の教育だからです」
「…黙秘します」
母親の事はどうしても、批判されたくはなかったため黙秘を選んだ。
「ねぇ!私の勘ではこれ!!早く行くわよ!アテーナーも心配だし…」
キュルが大きな本を持って奥から帰ってきた。
「いや、キュルここで読んでいこう。先生は俺達を部屋に軟禁するつもりなんだ、部屋に持っていけないだろ」
キュルの方へ顔を向けるキュルは焦っているのか本をギュッと握って立ったままだ。
「…でも、私こんなに覚えられないわ」
「バラキス…」
「キリゼシス」
よそ見しているのが悪かった。俺だって先生がグランドを見ているよそ見を狙ったのだから先生だって俺がキュルを見た時のよそ見を狙うに決まってる。
目の前からキュルが消えた。
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