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夜。そういえば、大広間に集まろうなんて話をしていたことをさっき思い出した。キュルはどうするだろうか?っと、いうか…そうか。迎えに行くことに変わりはないからべつに修正しなくてもいいか。 なんて思いながらキュルと合流する。 「ごめん。待った?」 「ううん、全然!」 キュルはぶんぶんと頭を振った。ガルガからケショパに向かうには二ルートある。普通に廊下を行くルートと中庭を行くルートだ。廊下には先生が頻繁に出入りしているため避けたい。今日はスーヴィ先生のようだ。 「ねー、見た?今日はスーヴィだよ…」 「まぁ、全体の見回りがピーター先生って事は当たり前か…」 「他の間抜けな先生とかでもいいのにね!」 キュルはぷんすこ怒っているが悪いのはこっち側が八割くらいなので怒れないぞ。 「とりあえず、中庭から行こうか」 「中庭かぁ…」 何故中庭が嫌か。中庭は周りから丸見えだからだ。学校は中庭に面する所はガラス張りになっていて、先生が問題を見つけたらすぐに駆けつけられるようになっているらしい。…昔中庭でタイマンバトルが起きてからガラス張りになったらしい。いい迷惑だ。 「中庭…でいく?先生が居ないことに賭けない?」 「扉前の監視は一時間に最低五回だよ?あと…スーヴィ先生は扉前の監視はずっとその場に留まってる。逆に言えばスーヴィ先生が扉の前にいるから逆に安全かも」 「確かにと言えば確かに…スーヴィじゃなければ逃げ切れる自信あるかも…!」 スーヴィ先生は面倒だ。皮肉は長いし罪は重いしであんまりいい事は無い。俺は先生は好きだけど重い罪だけは頂けない。 「じゃあ中庭から行こう。いくら逃げ切れるからって注意はしてね」 今日ほかの見回りの先生にバレたらめんどくさい。 「わかってる!」 そう言ってキョロキョロと周りを見渡す。誰も居なかったようだ。スっと動くキュルは早い。俺も負けないけど、ガルガの中では上位に属すると思う。 すぐにケショパの扉の前に着いた。コンコンと扉を叩くと恐る恐ると扉が開く。 「あ、ローブにキュル…!待ってたよ」 「ごめん、どこに集まるって言ってなかったよね」 「うん。だからとりあえずケショパに留まることにしたんだ」 「とりあえず入れて!バレたらまずいから!」 いそいそとケショパへ入る。ケショパとガルガはあまり構成が変わっていないようだ。変わってるといえば壁の色くらいと汚さくらい。ちなみにガルガはめちゃくちゃ汚い。スーヴィ先生に一喝されて渋々片付けるのがガルガだがケショパは綺麗だった。さすが女の先生って感じはある。 「わー、ちょーキレイじゃん。私たちのとこなんて超汚いのに…」 「ははは、まぁ…そうだね。先生が厳しいから」 なんて話しながら対談室に向かうと机の上に見覚えのある色のものが見えた。 「あ、あれ俺のウィッグじゃん!」 「そう!そうなんだよ!見てみて!」 グランドはニコニコと笑っている。もしかして… 「じゃーん!直せたんだよ!」 直せた、というか…くっついているだけだが、意外と目立っておらず、髪の毛を振ると少し塊になって動く。くらいの違和感だった。 「いいね!これなら鍵を直せるよ。髪の毛だから違和感あるけど…鍵なら違和感ないんじゃないかな?」 「すごいじゃんアテーナー!完璧!さすが私が見込んだ男よ!」 見込んだのは俺だけどな…って言おうとしたけどやめた。早く行かないとピーター先生が図書館に行ってしまう。 「でも、どうやって?今日の門番はスーヴィ先生だよ」 「また中庭から行けば良いんじゃない?」 「ただ…中庭から図書館に行くのはすっごく時間がかかるよ。結局は中庭から廊下に行かなきゃだし」 「でも、それしかないよ。そうしよう。時間がかかるなら早く行った方がいい。簡単に作戦を言うと、中庭から図書館に行く。その時は見回りの先生に見つからないようにこっそりね。見つかったら…バラバラに行こう。集合場所は図書館。これは変わらないからちゃんと守ってね」 「バラバラ…?」 「下手したら誰かが犠牲になるかも…その時はグランドは絶対に逃げて俺たちのどっちかが捕まろう。グランドは鍵を開けて閉める役目があるからさ」 「鍵を壊すのは呪文で良いんだよね」 うんと頷く。よし、行こう。 「もし、もしだよ?失敗した場合は?」 「と…いうと?」 「だから、皆先生に捕まった場合のことよ」 「その時は…危険になったらやめるって話だっただろう、先生が捕まえてくることは十二分に危険だから冒険はそこで終わりだ」 「えええええ!?なんでよ!」 キャンキャンと叫ぶキュルを横目に頭の中で作戦を組み立てる。穴だらけだろうが…なんとかなる時は何とかなる。これで行こう。 「キュル、うるさい。早く行こう」 「うん、僕も…それがいいと思うよ」 早く行かないとうるさいって先生が入ってくるかもしれないしね。と言ってグランドは中庭の扉を開けた。 「…人はいない?」 「居ないみたいだけど…」 そろそろと歩くが難なく図書館前に着いた。 「なーんだ、なんか、拍子抜けした感じ」 「ピーター先生にも会わなかったね…僕達本当に運がいいのかも」 なんて言っているが俺は不安だ。こんなに会わないなんて…虫が良すぎる。 「いや、今日は引き返した方がいいかもしれない」 「何言ってるのよ、こんなチャンス滅多にないわよ」 早く鍵壊して行きましょう、とキュルは意気込むが止めた方がいいと俺は止める…が、キュルはぷんすこ怒りながら言ってくる。 「そう言ってもう冒険させないつもりでしょ?知ってるのよ、冒険に乗り気に見せて途中で止めようと思ってたんでしょ!」 「違うよ!確かに冒険には興味はある。でも危険なのはダメだよ!先生がこんなにも居ないなんて怪しすぎる!」 「ローブ…君は少し神経質すぎるよ、ピーター先生は一人だよ?一人なんだから見回りは人が少ないのが普通だよ」 「いや…」 なんやかんや言いくるめられた、みたいになっているが全く言いくるめられていない。見回りは力がある先生がやっているのだ、俺は知っている。スーヴィ先生が動物たちを使って見回りを分担していることを。 スーヴィ先生は一人では担当しきれないため動物たちに頼っているのだ。 …だから、ピーター先生も何かをしているに違いない。そう思っているが二人は聞かない。もう… 図書館の鍵を壊す。 「ブランクント」 パキンと音が鳴ると鍵からポロポロと落ちる。 「よし、これで図書館に入れるよ」 「…図書館に入って何するんだっけ」 「先生が言ってた変わらずの像を調べるのよ、図書館にはたっくさん本があったし、絶対に一冊くらいあるわよ!」 そうキュルは意気込み、扉を開けていく。 ガチャリと開けると真っ暗な図書館だった。 「わ、夜って怖いね」 「まぁ、そら夜だし…でも、月明かりがあって割と明るいし…綺麗よねー!」 そんな会話をしながら進んでいく。なんだか…嫌な予感がする。 閉じていなかった扉がバタンと閉じる。 驚き後ろに振り向くと月明かりに人影が現れた。
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