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発明されて、それが自分たちの手元に届くまで、科学技術の発展は本当に目覚ましい。
ついこの間まで衛星が出来る事なんて限られていたのに、今じゃ自分が何処にいるかまで把握されるんだ。
それを怖いと思うかどうかは人それぞれだけど、僕はそうは思わない。だって、それを駆使したこのゲームは面白くって面白くって。
最近流行りの位置情報系ゲームだ。自分のいる場所がまるで冒険のような世界になって、そこへモンスターが出て来る。これが面白くないって言う奴は、多分強がってるだけだよ。
そんな訳で、最近の僕はどっぷりこのゲームにはまってしまっているのだった。
今日は天気が悪い。本当は外へ出て冒険したいけれど、そういう訳にもいかない。家の中にいてはモンスターも何も出ないので、僕はアプリを開いたり閉じたりしながら画面を覗き込んでいた。
すると突然、僕の近くに一人のプレイヤーが現れた。
ん? こんな機能あったっけな?
僕は気になって、そのプレイヤーをタップしてみた。でも、何の変化もない。
と、プレイヤーが歩き始めた。僕の方へ、ゆっくり歩いてくる。
バグかな? と一瞬思ったが、そうじゃない事にすぐ気が付いた。
そのプレイヤーは、道に対して忠実に進んで来るのだ。僕の家の玄関から中に入って、廊下を曲がって、僕のいる部屋へと近づいてくる。
誰か……来る? そう思っているうちに、プレイヤーはどんどん僕の部屋へと近づいてくる。
僕は意を決して、部屋のドアを開けてみた。
そこには、何もいなかった。
何だ、やっぱりバグか。
僕はそう思って、またスマホに目を落とした。
そこにいる筈の僕のキャラクターはおらず、今僕のいる場所に立っているのは、さっき歩いてきたあのプレイヤーだった。
すると突然、目の前が霞んだ。身体が重い。立っていられなくなって、僕はその場に倒れた。
見ると、僕の手も足も、薄くなってきている。感覚もなくなってきた。そう思っているうちに、僕の目の前は真っ暗になった。
まるで、戦いに負けたゲームの主人公みたいに。
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