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『竹蔵、カヨの2人が石を持って淵へ向かう。次の朝石が戻って来たので、2人は無事に逃げおうせたようである。
今年は本当に良く雨が降り、隣村へ行く唯一の橋が流され村は陸の孤島となってしまった。そこで新しい橋を架ける事となった。新しい橋は流されないような頑丈な橋であって欲しいと人々は願った。そのために村人は神に捧げものをする事にした。所謂”人柱”である。誰にするかはすぐに決まった。今年年貢を納められなかった者だ』
「え……」
『人心とは恐ろしいものである。自分の家族が無事でいられるのならそれで良いのだ。犠牲となる家族を助けようなんて者は誰もいなかった。
娘は逃げて良かったのだ。こんな冷酷な村など捨てて正解だ。
私も捨てよう。この村には辛い思い出しか無い。
他人を救おうとか助けようなどと思う人間はいない。
なので私ももう村人を助ける事はやめる。誰もこの村から逃がしてはやらない。苦しんで悲しんで、本当の人の心を取り戻すまでは逃げてはいけない。
声をあげ村を変えようとする勇気のある者が出るまで、石はわしが預かる。そんな勇者が現れた時に石は社に戻るであろう。
1日でも早く現れる事を祈りつつ、わしは山へ入る。 猿』
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