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カヨは本を投げ出し外へ出た。後ろから竹蔵が追いかける。
「おっとう……おっかあ!」
そう叫びながらカヨは村の外れの橋まで走った。
今は立派な鉄筋の橋が架かっている。ちょっとやそっとの大雨にはびくともしない頑丈な橋だ。
カヨは橋のたもとに倒れ込んだ。
「おっとう! おっかあ!」
コンクリートで固められた地面をカヨは必死で掘った。叫びながら、指から血が出ようがひたすら掘った。
「カヨ、やめろ! 血が出てる」
「この下におっとうとおっかあがいるんだ! 私が逃げたせいでおっとうとおっかあは埋められたんだ! 私のせいだ!」
「カヨ、カヨ!」
竹蔵はカヨを抱き締めた。カヨが動けないほど強く抱き締めた。
「カヨ……」
どんな慰めの言葉もカヨには届かないと竹蔵は分かっていた。
夕日が沈んで行く。昔も今も太陽は同じだった。
泣き疲れたカヨは呆然と空を眺めていた。そんなカヨをこの先ずっと自分が守っていこうと、竹蔵は今まで以上に強く心に決めたのだった。
〈終〉
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