龍ヶ淵戻石伝説

12/12
前へ
/12ページ
次へ
 カヨは本を投げ出し外へ出た。後ろから竹蔵が追いかける。 「おっとう……おっかあ!」  そう叫びながらカヨは村の外れの橋まで走った。  今は立派な鉄筋の橋が架かっている。ちょっとやそっとの大雨にはびくともしない頑丈な橋だ。  カヨは橋のたもとに倒れ込んだ。 「おっとう! おっかあ!」   コンクリートで固められた地面をカヨは必死で掘った。叫びながら、指から血が出ようがひたすら掘った。 「カヨ、やめろ! 血が出てる」 「この下におっとうとおっかあがいるんだ! 私が逃げたせいでおっとうとおっかあは埋められたんだ! 私のせいだ!」 「カヨ、カヨ!」  竹蔵はカヨを抱き締めた。カヨが動けないほど強く抱き締めた。 「カヨ……」  どんな慰めの言葉もカヨには届かないと竹蔵は分かっていた。  夕日が沈んで行く。昔も今も太陽は同じだった。  泣き疲れたカヨは呆然と空を眺めていた。そんなカヨをこの先ずっと自分が守っていこうと、竹蔵は今まで以上に強く心に決めたのだった。 〈終〉  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加