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猿婆の話に恐れをなしてしばらく黙り込んでいた2人だったが、カヨが決心したかのような強い力で竹蔵の手を握ると竹蔵もカヨの倍の力で握り返した。2人はしっかりと見つめ合い、頷いた。
「行くよ。龍に食われようがカヨと一緒なら俺は幸せだ」
「私も。竹蔵となら地獄だろうが何処だろうが、ついていく!」
若者の熱病にはかなわんと猿婆も諦めた。
「いつか必ず後悔するぞ。まあ行かなかった事を後悔するよりはましかのう」
猿婆は曲がった腰を押さえながら2人を残して去って行った。
竹蔵は社の中から石を掴んで懐へ入れた。
「カヨ」
「竹蔵」
2人は神社を出て川の方へと歩き出した。暗く、道など見えもしない。草むらの中をずんずんと進む。枯れた草で足を怪我しようが気にせず進む。
虫の声の向こうから水の流れる音が聞こえて来た。2人は川岸に着いた。しかし2人は川沿いに進む。濡れた石に滑ろうが、尖った石で足を切ろうが構わず進む。
やがて水の流れる音が静かになって来た。
「着いたよ」
龍ヶ淵だ。
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