13人が本棚に入れています
本棚に追加
「カヨ、カヨ!」
竹蔵に体を揺すられカヨは目を覚ました。
「ここは……」
2人は川岸にいた。すっかり太陽は上まで昇っていた。カヨが手を開いてみるとそこに石は無かった。
周囲を見渡すと明け方に飛び込んだはずの龍ヶ淵にいる事が分かった。失敗したのか。だが打ち上げられるほど流れが激しいわけでも無い。元の場所にいる事を不思議に思いながらも何か不自然さを感じた。
「これ何だ?」
竹蔵が見つけたのは『飛込み禁止』と書かれた立て看板だった。しかし看板は固く冷たい今までに見た事の無い板に書かれていた。看板の足の棒も木では無く、やはり固く冷たいツルツルした物質だった。
2人は成すすべもなく来た道を歩いた。来た時は真っ暗だったので見えなかっただろう物がはっきりと見えた。それにしても何かが変だった。あんなに足に傷を負わされたはずの草むらが無く、きれいに刈られていた。川原のあちこちに紙とは違う素材で出来ている袋が落ちていたり、妙な形の透明な入れ物が落ちていた。
道に出ると地面に2本のへこみが出来ていて、それがずっと続いていた。
2人は異様な雰囲気を感じながら黙って歩いた。
「え、何!?」
夕べ、そこには朽ち果てそうな哀れな社があったはずである。しかし今目の前にあるのは小ぢんまりとはしているが立派な神社だった。小さいながらも人がくぐれる大きさの鳥居も立っていた。
「何で……。いつの間に……」
神社の横には家があった。だがその建物は今までに見た事の無い風貌だった。家の庭に洗濯物が干してあったが見た事の無い着物だった。
「どうなってるの?」
「一体何があったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!