13人が本棚に入れています
本棚に追加
2人が困惑して神社の前で立ち尽くしていると家から老婆が出て来た。
「あら、もしかしたら龍ヶ淵から来たんですか?」
老婆は優しそうな笑顔で話し掛けてくれたが妙な格好をしていた。上下別々の着物を着ていて髪も短くしている。
「さあさあ、あがって下さいな」
老婆は2人を家に招き入れ茶の間に通した。いや、玄関からして妙だった。草履さえ見た事もない形をしていたし、傘も紙や布では無く透明な寒天みたいな素材で出来ている。茶の間にも初めて見る何に使うのか分からないような物ばかりが置かれていた。
2人はしばらくあちこち見渡し、落ち着かない気持ちで座っていた。
「どうぞ」と差し出されたお茶を口にし少し落ち着きを取り戻した。
「あの、ここは……」
「はい、ここはあなた達のいた村ですよ。えっと、竹蔵さんとカヨさんですか?」
「私たちをご存知なのですか?」
この老婆に会うのは初めてだが村人ならば知っていても不思議では無い。老婆は眼鏡を掛け古い書物を指差しながら読んでいた。
「この神社に昔から伝わる書物です。ここには龍ヶ淵から来るであろう人の名前が書いてあるんですよ。あなた達で最後ですがね」
「それって……」
「百年以上昔にこの神社の巫女をしていた”猿”という方が書いた書です」
「猿……」
猿婆の事なのだろうか。でも百年以上昔とはいったいどういう事なのか。
最初のコメントを投稿しよう!