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「”この神社には不思議な石が祀られていてその石を持って龍ヶ淵から飛び込めば誰にも決して見つからない場所へ逃げる事が出来ると言う。その言い伝えを信じ多くの人が龍ヶ淵から身を投じた。遺体が見付からないので何処かで無事に生きているだろうとは思うが、一応その者たちの名を記しておく。”
……何年かに一度、龍ヶ淵からのお客様が見えるんですよ。その方たちの名前はこの書物に書かれている通りでした。そしてあなた達で最後となりました」
「最後?」
「猿は己の死期を悟ると石を持ってとある場所にある山の洞穴に入り、入口を閉ざしたそうです」
「じゃあもうあの石は無いのですか?」
「はい。今神社には淵から来られた方の着てきた着物を納めています」
「着物?」
竹蔵とカヨは自分たちの着ている着物を見た。
「ここはあなた達のいた時代とは違う時代なんですよ。ずっと、ずっと未来なんです」
「え!?」
「もう帰る事は出来ません。その覚悟はされていますよね。今の時代は着物を着ている人はいません。私のような格好を皆しています。着物を脱ぎ洋服に着替えて、新たな人生を送る事になります。そのお世話はさせて頂きますね。それが猿からの申し送りですので。ええ、あなた達で最後です。これで私の役割も終わりです」
老婆は奥の部屋へ行った。そして2人分の洋服を持って来た。
「これに着替えて下さい」
どうやって着るのか分からない2人だったが老婆が丁寧に着方を教えてくれた。
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