ブレイズ&フリーズ、真夏の夜のメモリー

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 獅琉と夕兎の撮影も無事に終わって、黄金色の夕日がもう少しで完全に海に沈むという頃。 「ここから少し歩いた所に社員用ロッジがある。一泊して、明日の朝にジャケット用画像とオフショットを撮影して、帰るのは明日の午後の予定だ。今日はゆっくり休んでくれ」  これこれ、これだ。俺が一番楽しみにしていた「夜のお楽しみ」。前にブレイズのメンバーで旅館に泊まった時も相当楽しかったけど、まさかまたみんなでお泊り会が出来るなんて。  山野さんから説明を受けて、俺達は機材を片付けるスタッフさん達より一足先にロッジへ向かうことにした。 「モデルさん達の鍵はこれですね。三つあるうちの一番デカいやつだからすぐ分かると思います」  フリーズのマネージャーである海原さんが獅琉に鍵を渡し、「ウチの三人をよろしくお願いします」と耳打ちする。  ブレイズもフリーズも同じロッジで一泊だ。最大十人で泊まれるというから、相当豪華で広いロッジなんだろう──考えただけで、わくわくが止まらない。 「獅琉さん達の撮影、すっごくロマンチックでした! 本物の恋人同士みたいで……」 「ほんと? 夕兎くんが意外とめちゃくちゃ可愛かったからさぁ。……ていうか亜利馬たちのは岩陰で見えなかったけど、凄かったんだってね」 「う、うーん……」  ほんのりと空が暗くなり始めた午後七時、両メンバー合計八人で海沿いの道をぞろぞろと歩きながら他愛のないお喋りを楽しんだ。 「コイツにイラマチオされるとか、すっげえ屈辱! 仕返ししてやるから覚悟しろよ」 「いでえっ! 痛いです、潤歩さん!」  後ろから俺の肩に腕を回してきた潤歩が、思い切り俺の頬をつねる。大雅と竜介は海を眺めながら俺達より少し離れたところを歩いていて、それより更に後ろを歩いているフリーズの三人は──何だかげっそりと落ち込んでいる様子だ。 「慣れてねえって、この俺が……年下のガキに、慣れてねえと……」 「お、俺はまだ×××が痛いといいますか……こんなの初めてで……いや、亜利馬くんが相手だから光栄と言うべきか……」 「……タチでもウケでも可愛いとか……ブレイズの獅琉め……そんな戯言ばかり言いやがって……」  大丈夫かなと思って立ち止まった俺の背中を、潤歩が両手で押して言った。 「ざまあみろっつうの。亜利馬ごときの締め付けで×××もげるとか、ありえねえから」 「亜利馬、その時のこと覚えてないの?」 「記憶はあるんですけど……あんまり。気持ち良すぎて……」 「いいなぁ、俺も久々に意識飛ぶほど乱れてみたい。潤歩もたまにはそういうの撮ってもいいんじゃない?」  馬鹿言ってんじゃねえ、と潤歩に尻を叩かれて獅琉が笑った。  やがて柵に囲まれた芝生広場みたいなだだっ広い場所に出て、更に道なりに歩いて行くと社員用ロッジが見えてきた。馬鹿デカいやつと、それと比べると普通サイズのタイプが二軒。スタッフやマネージャーや監督がどういう部屋割りをするのか分からないけど、モデル優先と言えど年下の俺達が一番豪華なロッジを使っても良いというのは何だか申し訳ない気持ちになった。 「うっわぁ、すごいね! ただの丸太小屋かと思ってたけどすっごい可愛いおうちって感じ!」  可愛いもの大好きな獅琉が目を輝かせ、ドアへと駆け寄って行く。  赤い三角屋根の二階建て。中は壁も床も階段も全てが温かみのあるパインツリー材で、テレビもキッチンもテーブルも、室内の全部が新品みたいにピカピカだ。 「広い!」  床に敷かれたカーペットの上で寝そべり、両手両足をバタつかせる。前に泊まった旅館の和室でもこんなことをしたような……俺はとにかく、広い部屋が大好きなのだ。 「室内階段なんだね、お洒落。上は……」  トトトと獅琉が二階へ行き、「二階は三人で寝れるみたい。布団も三組あるよ~」と声をかけてきた。 「そんじゃ、フリーズ御一行は二階で寝てくれよ。俺達はここを使うからよ」 「何を言う。グループなど関係ない、俺は亜利馬くんと寝ると決めてるんだ」  潤歩と秋常の子供みたいな言い合いがまた始まると、思ったその時── 「こいつの隣で寝たら、夜中に小便で起こされるぞ。いい歳こいてトイレも一人で行けねえんだもんなぁ、亜利馬?」 「ち、違います! 旅館の時は、部屋のトイレが故障してて……廊下まで行かなきゃならなかったから……!」 「亜利馬くんのお願いならトイレでも何でも付いて行きますから大丈夫ですよ!」 「ていうか潤歩さんだって幽霊見て一番ビビッてたじゃないですか!」 「馬鹿野郎っ、あれは幽霊じゃねえっつうの! てかビビッてたんじゃねえ、ちょっとビックリしただけだ!」 「どう違うんですか!」 「何なら亜利馬くんにはおむつを穿いてもらって、俺が交換するのも一つの手です!」 「そ、そんな手要りません! とにかく今回はトイレくらい一人で行けますから、大丈夫です!」  喚き合う俺達を冷めた目で見ながら、大雅が「お腹空いた」と呟いた。 「そうだね、もういい時間だしご飯にしようよ。潤歩達も子供みたいなことで喧嘩しないで、ちゃんと手伝って」  獅琉の号令でピタリと言い合いを止めた俺達は、渋々頷きそれに同意した。
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