ブレイズ&フリーズ、真夏の夜のメモリー

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 腹が膨れれば気持ちに余裕も生まれる。山盛りカレーを平らげて大満足の俺は、幽霊の話なんてすっかり忘れてソファに寝そべっていた。エアコンの風が気持ち良い。疲れた体が癒されて、何だか段々と眠くなってくる…… 「亜利馬、布団敷いたからこっちで寝た方がいいよ」 「……あ、あれ? 獅琉さん……。他のみんなは……」  一瞬だけ意識がなくなったかと思ったら、三十分くらい寝てしまっていたらしい。気付けばロッジの中には獅琉しかいなかった。 「フリーズ組は、海原さんの所に行ってるよ。明日の打ち合わせとか話してるみたい」 「大雅たちは……」 「大雅と竜介と潤歩は、ちょっとその辺散策してくるって。月が出てるから、夜の海すっごい綺麗みたいだよ」 「獅琉さん、もしかして俺が寝てたから残ってくれてたんですか?」 「ううん、俺は食後のコーヒー飲んでたから」  恐らく俺に気を遣った優しい嘘だ。留守番をするついでにコーヒーを飲んでいたという方が正しいのだと思う。月が浮かぶ夜の海なんてロマンチックなもの、獅琉が見たくないわけがないのだ。 「獅琉さん、みんなと合流しに行きませんか?」 「亜利馬、眠くないの?」 「眠気も吹っ飛びましたよ! ジュース持って行きましょう」 「うん!」  ロッジを出た俺達はドアに鍵をかけ、海原さんと山野さん達が泊まっているロッジへ向かった。フリーズのメンバーに鍵を預けるためだ。 「……だから、……で、もう少し……ですね」  窓から明かりの洩れるロッジの中、かすかに海原さんの声が聞こえる。何やら真剣に話し合っている様子だ。獅琉が山野さんに連絡をして外に出てきてもらい、事情を説明してから鍵を渡してもらうように頼むことにした。 「あまり遅くまで出歩くなよ。ただでさえこの辺りは暗いし、怪我でもしたら大変だからな」  山野さんもお酒を飲んでいたのか、若干顔が赤い。覗けば中にはヘアメイク担当の雄二さんもいて、ビール片手にニコニコと俺に向け手を振ってくれた。 「はい、なるべく早く帰るようにします。フリーズのみんなは、まだ話終わらなそうですか? もし良かったらせっかくなので、みんなで行けたらと思ったんですけど……」 「伝えておくが、いつになるかは分からんな。グループとして初めての撮影だったから反省点も色々とあるのだろう。……まあとにかく、気を付けろよ」  踵を返そうとしたその時、 「獅琉」  山野さんが獅琉だけを手招きで呼び、ロッジの玄関まで入って何か話し始めた。 「……前に相談された件だが、今日この後で二階堂さんに時間を取ってもらっている。決まるといいな」 「ありがとうございます! よろしくお願いします」  山野さんに頭を下げ、獅琉が俺の方へと戻ってきた。満面の笑みで嬉しそうだ。 「前に俺達で企画出し合ったでしょ。それをいくつかまとめて山野さんに渡しておいたんだ」 「あっ、合宿初日に話し合ったやつ」  すっかり忘れていた。俺達だけの、ブレイズの味を出すためのVについて話し合った企画の案──。 「たくさんあるから、どれか一つでも決まったらいいよね!」 「はい!」  そうして俺達は潤歩のスマホに連絡をして、意気揚々と夜の海へ向かった。
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