亜利馬、18歳のお仕事

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「……俺もお腹空いた」  大雅が呟くと、その向かい側で潤歩が笑った。 「おう、好きなモン何でも頼め。亜利馬が奢ってくれるってよ」 「言ってませんよそんなの。……大雅は奢るけど潤歩さんは自腹です」 「言うようになったよな、お前」  ともあれ、ブレイズの五人で集まると何となく安心できるのは確かだった。上京して初めてできた仲間達。同じ仕事をしている仲間達。撮影において俺はこの四人全員とセックスしている。だけど気まずくなったり変に意識してしまうこともなく、どんなに激しく絡んでも撮影が終わればお互いケロッとしている、そんな仲。  性を売りにしているとはいっても、線引きはちゃんとできている。仕事は仕事。そういう意識を持っていないとむしろAVモデルは続けられない。 「動画でまた、みんなでバドミントンやりたいね」 「やりたいです! 今度は負けたチームが罰ゲームやりましょう!」  三人より早く食事を終えていた俺と獅琉が談笑していると、潤歩がカレースプーンを俺に向けて言った。 「言っとくけど前回の負けは認めてねえからな。あんなモンはノーカウントだ」 「ええっ、……正真正銘、俺が勝ったのに?」 「汚ねぇ手を使われたからな」 「そんなことないのに。負けず嫌いだなぁ……潤歩さん」  今の時代、宣伝手段として動画は結構な効果がある。違法アップロードの問題は山積みだけど、動画自体からの広告収入もあるし、俺達のことを知らない人がそれを見てDVDを買ってくれれば万々歳だ。当然、動画の内容は健全でもアダルトサイトに誘導するわけだから最大手の動画サイトは使えない。  今のところ月二回で行なわれている俺達のチャンネル「@ブレイズ」では新作の宣伝や撮影の裏話をしたり、たまに宣伝とは関係なく外で遊んでいる様子を撮ったりしている。  俺としてはDVDの撮影よりも動画撮影の方が楽しくて、この仕事をする中で月二回といえど、動画の撮影日を何より楽しみにしていた。メインはエロだけど需要はエロだけじゃない。そういう時代になってきていると、俺達のマネージャーである山野さんが言っていたっけ。 「そういえば、『ブレイズのライバルグループになる』っていうヤツらはいつ頃出てくるんだろうな」  ステーキを食べ終えた竜介が誰にともなく呟くと、獅琉がスマホを開いて皆に説明した。 「ええと、夏頃にはって言ってたから……そろそろかな? なるべく俺達に知られないように水面下で動いてるみたいだよ。実際、山野さんからもあんまり情報来ないし」 「何だそりゃ、そんなことして意味あんのかよ」  潤歩がスプーンを咥え、眉間に皺を寄せる。 「分かんないけど、誰が来るんだろうね。俺達も知ってるモデルかな?」  インヘルと契約しているモデルの数は把握できないほど多いけど、獅琉達はモデル同士の交流もそれなりにあるから、知り合いのモデルがライバルになることも充分にある。  勿論ライバルと言っても、そういう「設定」であるだけだ。売上げを競って潰し合いをすることはないし、実際にいがみ合うこともない。恐らく「ライバル同士の絡み」を売りにしたDVDを出す企画の構想があって、ブレイズもそのライバルグループも、そのために結成されたのだと思う。 「でも、俺はともかくこの四人に挑んでくるってことは……向こうも相当なイケメンが来そうですよね」 「イケメンか。どんな技持ってる子なのか楽しみだなぁ」 「………」  頬杖をついてうっとりと呟いた獅琉を、俺達は無言で見つめていた。
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