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高校最後の夏休みに僕はとある展覧会に来ていた。周りの人間は受験のため最後の追い込みをかけている。大学には推薦で受かってしまった僕は切羽詰った周りの空気に息苦しさを覚え、なんの気もなしにこのマリー・アントワネット展に来てしまった。
「しかし、平日の昼間だからか人が少ないな……」
通路は直射日光で展示物が傷まないように締め切られ、薄明るくライトアップされている。僕は人が殆どいない館内の中でも、他に人が全くいない展示の前に移動した。
「絶世の美女がこんなドレスを着てたらさぞやちやほやされるんだろうな」
実際には我侭すぎると処刑されてしまうらしいが。美女は性格も美女じゃないと駄目なのだよ。
誰もいないと思っていたがふと視界の端に人影が映る。僕は何の気なしにそちらを向くと、そこには日本人離れした外観の美少女が立っていた。金髪に碧眼で、まるでパーティにきた淑女のようだ。他に人がおらず、一抹の寂しさを覚えていた僕はまるでナンパのように彼女に自然に話しかけていた。
「こんにちは。凄い展示の数ですよね」
「……?」
彼女は後ろを振り向いた。もちろん誰もいない。
「貴方、私が見えるの?」
「え?」
見えるも何もさっきからガン見している。
「私はマリー。初めて私が見える人に出会ったわ」
「え、マリーってまさか」
僕の頭の中は真っ白になった。あのマリー・アントワネットが目の前にいるのだ。興奮するなというほうが無理であろう。
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