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鳥類学者 佐川大尉
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鳥類学者の佐川大尉がここ満州軍司令部にいるのは別の理由があった。
かつて8月の第1次旅順総攻撃の時に第3軍が包囲した旅順市街からどのような方法かは分からないが敵方の満州軍総司令部のクロパトキン大将に伝令が伝わっているという事実が発覚したのである。
無線機はすでに発明されていたが当時の性能では遠距離では使えなかった。
とすれば通信兵が重包囲の囲みを突破して密書を伝達しているかまたはそれ以外の方法があるのか謎であった。
しかしいずれにしても現実は旅順守備隊と奉天にあるクロパトキンの司令部がいわゆる「ツーカーの状態」であったのである。
乃木希典の第3軍が詳しくこれを調べると、どうやらロシア軍は伝書鳩を使っているようであった。
重要な情報は伝書鳩の脚にくくりつけて奉天方面に放っていたのである。
この報告を受けた児玉源太郎は急遽、宮中にある鷹匠を招聘して鷹を使って伝書鳩を捕獲するよう命令した。
鷹は飛行中の鳩を好んで捕食するという。
宮中から召し抱えられた鷹匠たちは5羽の鷹を引き連れて満州に到着した。
非軍属の彼らは軍に慣れないために仲介役として鳥類に詳しい佐川大尉が東京から同行して入ってきたのである。
この5羽の鷹の導入によってかなりの伝書鳩が餌食になって通信を遮断したと伝えられている。
※※※※
「しかし鷹の次はフクロウか・・・大事な日露の戦いが何やら『鳥まかせ』のような気がしてきたな」
源太郎は自慢の白い髭を触りながらそう呟いた。
「はっはっは。戦う相手も黒鳩(当時、敵将クロパトキン将軍を陸軍はそう呼んでいた)じゃっけん丁度よかたい!」
大山は豪快に大笑いした。
「ドーン ドーン」
遠くでまた遠雷のような重砲の音が間断なく聞こえる。
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