445人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
広いリビング、照明は少し薄暗くて、大きな窓からは外の景色がよく見える。
グラスに注がれたワインは真っ赤に染まり、男はいかにも高そうなソファの上に寝転びながら、その味を楽しんでいた。
しかし、くつろぎの時間は美由の言葉と共に一瞬で終わってしまった。
「ああ！？ふざけんなよ！妊娠しただぁ！？」
男は怒り狂いながら美由の髪を掴まえた。
「タイミングはかったみたいにそんな事言いだしやがって！舐めてんじゃねーぞ！」
耳元で声を張り上げたかと思うと、男は美由の頬を叩き、腹を殴った。
勢いで床に転がった美由の腹を、今度は足で蹴り始める。
「ごめんなさい！お願い！暴力はやめて」
必死で叫んでも男の暴力が止まることは無い。
美由はお腹を守りながらなんとか這い上がると、ソファの上に置きっぱなしだったバッグの紐に手を掛けた。
男はその行動に気づいたのか、暴力を振るうのをやめた。
ソファに戻り、立ったまま美由を見て威嚇している。
「出てけ！ガキなんておろせ！二度とこの家に帰って来るな！」
美由は何も言い返す事もできず、口唇から流れる血を指先で拭いながら、部屋を後にした。
最初のコメントを投稿しよう！