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それは独り暮らし用の小さな冷蔵庫だった。 「姉ちゃん…それぐらい一人で運べなきゃ接客業なんて無理だよ。今時の客はとんでもないワガママを言うからね。洗濯機や液晶テレビや10キロの米袋3体をいっぺんに持ってこいっていう訳のわからん客もいるんだよ? “お前が買ったんだからお前が持てよ”…って、喉まで出掛けて引っ込めるけど、相当ひどい社会だよ。 も程度問題だよね。たかだか一般人が、王族のような扱いが受けられると思っている方がイカれてるわ」 奏多は笑いながらコーラをがぶ飲みすると、結局部屋まで冷蔵庫を持って行ってくれた。 今日から架音と美乃里と美織の新らしい生活が始まる。 まだ不安はあるが、葉月の目の届く範囲で家を選んでくれたことには感謝しているし、できれば架音と美乃里の将来の姿も見たいものだ。 葉月もそんなことを思いながら残りの家財道具を運び入れた。
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