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そして最後に野本に対して葉月は、「十朱さんたち3人に暴行を加えた男たちは起訴できますか?」と、訊いた。 「今、他の被害者にも聞き込みを続けています。元々素行の悪い人たちだったようですから、できるだけ重罪にして刑務所に送ってやるつもりで捜査してます。もう少し時間はかかりそうですが、やつらは間違いなく追い詰めますよ」 野本はそう言って余裕の笑みを浮かべた。 葉月の表情はそれでも晴れることはなく、どこか上の空で、外を自由に飛び回る鳥を見ていた。一度過去を思い出してしまうとなかなか忘れることは難しい。 男性から暴力を受けたのは十朱たちだけではなく、この世の中にはいっぱいいるのだ。 中には恋人にその事を隠している人もいるだろう。不運にも妊娠してしまった人だっているのかもしれない。 今まで葉月がどうしても詩音の気持ちに前向きになれない理由はここにあった。 知られたくないという思いが大きい。 しかし、今は違う。詩音はしっかりと葉月の言葉に耳を傾け、最後まで話を聞いてくれた。それは大きな救いになった。 詩音のお陰で、葉月は自分が受けた仕打ちを忘れず、あの出来事は同意ではなかった…と、しっかり主張しようと決意した。
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