処刑

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「兄貴!」 最年少が叫ぶと、男は背後を振り返る。 メガネをかけた青年の顔がすぐ真横にあった。 男も驚いて後ずさったが、なんとかその場にとどまった。 「てめぇ…おどかしやがって!なんのまねだよ!」 向き直って胸ぐらを掴まえようとした男だったが、メガネ男子はするりとその手をかわした。 弱そうに見えていたが意外と反射神経はいいらしい。男たちを恐れる様子もなく、珍しい物でも見るような視線を向けて、彼はこう訊いた。 「おじさんたち、悪趣味なことしてるんだってね。ちまたじゃ有名だよ」 「ああ!?なんだ、てめぇ!」 また掴み掛ろうとしたが、メガネ男子はまたもあっさりとその手を避けた。その身のこなしを見て、男たちも気付いたようだ。簡単には勝てない相手だという事に。 明らかにフットワークが自分達とは違うと気づいた。無駄の無いしなやかな動きはただの喧嘩好きじゃないことを示している。格闘技でもやっているのだろう。 男たちは息を飲んで、黒淵メガネの奥にある瞳を見ていた。 なぜ自分達に声をかけたのか、真意が知りたい。 しかし、そう思っていたのも束の間。メガネ男子はパーカーのポケットからスマートフォンを取り出すと、警戒する様子もなく操作を始めた。
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