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「これは…どうしようね」
明子さんが声を震わせた。
どう見たって人が住む家ではない。
仕事道具を管理するための小屋…というのが妥当だ。
きっと二人がこの小屋から出勤してくるのには理由があって、住所として記載できないのにも理由があるのに違いない。
「行こう。やっぱり放っておけない」
葉月が後部座席のドアを開け、小屋へと歩き始めると、明子さんも後ろから小走りでついてきた。
薄っすら雪の積もった道路は、どこが氷か分かりづらく、いつ転倒するか分からない。
小屋の前まで来て葉月がドアをノックすると「はい?」と、美乃梨が顔を出した。
相手が葉月だと気付いた時の美乃梨の動揺は想像を絶する。
口をパクパク開けて、顔を真っ青に染めていたのだから。
「架音ちゃんもいるんだよね?」
そう訊くと、小屋の奥から架音が顔を覗かせた。
「社長……」
観念した様子の架音と美乃梨は、顔を見合わせて頷き合っていた。
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