第4章 河童の里と黒い怪物 ③

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 暗闇の坂を走り抜けると、道の先に神社の鳥居が見えて来る。 『大丈夫か? もう少しだ』 『え、ええ……』  しかし、俺達が石段に登ろうと鳥居に近づいた時、正面に再び黒い霧が立ち込め始めた。 (まさか、奴は影を複数体出現させられるのか……!?) 『友和君! 後ろ!』  俺が振り向くと、神岡が背後を向いて叫んでいた。そこには既に手の形をした黒い霧がこちらに向かって指を広げている。 (奴らは転移も出来る……複数で囲まれたら、彼女を庇いきれない……!)  そう考えていた矢先、神岡は急に俺の手を振り解くと、あろう事か黒い手に向かって突然走り出した。 『おいっ!?』 『ええーいっ!』  彼女は持っていたハンドバッグを振り回して、黒い霧に思い切り叩きつけたのだ。  どういう訳か、鞄が激突した箇所が少しだけ霧散した。黒い手は多少怯んだものの、直ぐに元の形に戻っていく。 『大丈夫よ! 友和君は私が守るわ!』  そう言いながら、彼女の背中は少し震えているように見えた。 (……その台詞、俺はどこかで……?)  俺は何か思い出しそうになったが、今は深く考え込んでいる時間は無い。奴らが何体まで居るのか分からないが、これ以上増える前にこの場を離れたい。 『こいつらは倒せない! 逃げ切るぞ!』  俺は再び神岡の腕を掴んで引っ張り寄せながら、時間稼ぎの為に目の前の黒い手に鎌で一撃を加えた。  そのまま振り返って、鳥居の前で手の形が出来上がっていた黒い霧に、もう一撃加える。
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