第1章 食いしん坊の幽霊 ①

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 この神様とは、数年前の夕暮れ刻に近所の坂道で出会った。  この辺りは田舎なので田畑や雑木林がほとんどだ。民家もぽつぽつとあるが、家の前を通り過ぎる人間は大抵知った顔だった。  それがどういう訳か、その時現れたのは白く癖のある髪をのび放題にして、着流し一枚で歩いている男だ。怪しいにも程がある。  面倒事に巻き込まれるのは御免だったので、顔を伏せて通り過ぎたが、そいつはそこで踵を返すと、ずっと俺の後をつけて来た。 (このまま行くと、家までついて来ちまうな……)  それはそれで面倒になりそうなので、俺は少しだけ振り返って男の様子を確認した。  男はどうやら、俺の持っている紙袋が気になるらしく、じっと袋を見つめたまま歩き続けている。
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