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誤解だらけの恋愛
「ちょっと待ってよ!七瀬くん!そんな簡単に私たちのこと誤解されたままでいいの?そんな簡単に…菫のこと、諦めるつもり?そんなもんだったの?七瀬くんの恋愛って軽いんだね…」
私はあの時本当は気づいてた。七瀬くんが誰よりも苦しんでいたことに…。そして、誰よりも菫の事が好きなことに。七瀬くんの背中はとっても冷たく凍えている。
だけど外の気温は37度。猛暑だ。
こんな日に、背中が冷たくなるわけもなかった。
「諦めるわけ…ないだろ…。でも、こんな結果になっちまうなら諦めるしかない…。もう後戻りは出来ないんだ…。誤解だって言ったところで何になる?ただの言い訳にしか聞こえない…」
彼から菫のことを相談されていたからこそ分かる。彼は一途だ。一途で菫しか見えていない。だけど私の気持ちは……。
「あ、ねえ、だったら素直に謝ればいんじゃない?私は友情壊れちゃうかもだけど…けど私は平気。七瀬くんがいるから…。」
正直、今の七瀬くんは中身のない抜け殻だ。そんな彼を私は見ていられなかった。
「俺は…あいつが誤解したならそれでいい。誤解を無理に解こうとは思わない。だって、もしあいつが俺を気にかけてくれているなら、その内誤解は解ける。そうだろ…?」
かっこいい事を言っているように聞こえるが決してかっこよくない。だって、誤解されたままなんていいはずがない。彼は臆病になっているだけなのだから。
でも、私はそれでもよかった。誤解が解かれなくても彼とこうしていい関係が保てるならそれだけでいい。
「うん、そうだね」
と私は笑顔を作った。
作ったというのは間違いで、笑顔になったが正解だ。
彼が誤解を解かずにいてくれて、私だけのものになるチャンスがようやくきたのだから。
「俺…菫は好き。だけど、それと同様に…桜のことも好きだったんだ…。俺って最低だよな…」
私のことも好き。それを聞いて決心がついた。私は友情を諦めて恋愛を第一に思うことにする、と。
「最低なんかじゃないよ…。七瀬くんは最低なんかじゃない。最低なのは私なんだ。」
そういうと、彼の頭上にははてなが浮かんでいる。
「私、ずっと友情も大事だし恋愛も大事だと思ってた。でも、私は親友の好きな人を好きになってしまった…。それを隠して親友が好きな人とうまく行けるように協力をしてた…。ずるいのは私だ…。」
なぜだろう。その罪悪感のせいか涙が一粒
二粒…と流れ出てくる。
目の前の彼の瞳には私が写っていて、 何か悲しげな表情をしていることに気づいた。
「俺、 桜のことが好きだ。菫よりも。俺のことをそこまで思ってくれていた桜に今、惚れた。菫には謝って誤解じゃないってことを言ってくる。だから、待っててくれ」
彼はその優しい瞳とは違って何かを決心したように鋭い瞳へと変わっている。
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