<第一話・裂>

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――くっそ、だからってさあ……あんな言い方することないじゃん!  そう、そのはず、だったのだが。  蓋を開けてみれば、焔はとんでもない毒舌男だった。美園が調べてきた怪奇現象の研究レポートを、“自分の足で取材もせず、よくこの程度の内容を自信満々に出して来れたものだな”と鼻で笑って見せたのである。文化祭では、怪奇現象クラブも研究成果を発表することになっている。研究成果を纏めた新聞も出す。この程度では発表に組み込むことも記事に取り入れることも到底不可能だ、ゼロからやり直せ――彼はちらっと見ただけで、あっさりと一刀両断してきたのだった。  確かに、実際に取材には行っていない。それでもネットと図書館でかなりの情報は取り入れたし、自分にしてはかなり大真面目に話をまとめたつもりだったというのに――何も、あそこまできつい言い方をしなくてもいいではないか。  聞けば、あれが焔の通常運転なのだという。彼はオカルト研究に関しては一切の妥協がないと有名だったのだそうだ。ついでに、女性に関しても同様で、あれだけのイケメンなのにカノジョの影が一切見えないのだという。実は同性愛者なんじゃないの、なんて噂がうっかり立つほどである。彼にアタックして撃沈どころか粉砕された女性は数多く存在するのだとか、なんとか。 ――私だってさあ!頑張ったんだからさあ!ちょっとは認めてくれてもいいじゃないのさあ!  ああ、一人暮らしで良かった、と心底思う。多少荒れていても、それを誰かに見咎められるということがないのだから。 ――今に見てろよお……!すっごいレポート出して、鼻を明かしてやるんだから!  美園は真っ暗な部屋で、ひたすらパソコンと向かい合っていた。取材をするにせよ、場所やら噂やらにアタリはつけなければいけない。何でもいいから、面白そうな話が落ちてやしないかどうか。  そう、動機など、そんな程度だったのである。  美園がとある大型掲示板を覗こうと思った、その理由なんてものは。
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