<第十八話・爆>

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「何で……何でぇ……!?」  訳がわからなかった。持ち出せたのは、肩に引っ掛けたままだった小さな肩掛け鞄と、そこに入っていた貴重品のみ。トランクに積んだ荷物も、給料を貯めて買った愛車も、琴子のお土産も――祖母も。全部が爆散し、火の粉になって崖下に舞い散っていく。 ――おばあちゃん。何で、どうして?おばあちゃんは、生贄じゃないんでしょ?なのに、何で?  それに、琴子は。本当に、今見たような怨霊が相手であったというのなら――助かる見込みなどあるのだろうか。  いや、美園とて本当はわかっているのだ。あれは祖母が、自分に友人を諦めさせるために言った方便だと。本当はもう、琴子を助けるのは不可能だと祖母は思っていて、美園だけでも救うためにあんなことを言ったのではないかと。 ――私の、せいだ。  祖母が言った、この村の真実。あまりにも信じがたいことではあったけれど、もはや信じる信じないの議論をしている場合ではない。  確かなことは一つ。この状況を招いたのは他でもない、美園自身であるということ。  美園があんな掲示板を見なければ。あんな書き込みを間に受けなければ。そして、いくら友達だからといって――琴子を誘ったりなど、しなければ。きっと彼女は巻き込まれないで済んだはずである。そして祖母も。自分を逃がそうなんてことを思ったりしなければ、こんな事には――! 「!」  ぴろりん、と突然すぐ近くで大きな電子音がした。美園はぎょっとして、バッグの中を見る。鳴ったのは琴子の携帯電話ではなく、美園の方だった。勝手にスリープモードが解け、ロック画面が出る。そして美園が見ている前で、勝手にボタンが押されていく。 ――なに、が。  ロックが解かれる。そして表示されたのは――あの、全ての始まりの掲示板だった。そういえば、昨日夕方に書き込んで、それ以降うっかり実況を忘れていたのを思い出した。お酒が入ってひっくり返ってしまい、此処に来た本来の役目を忘れた時点で既に意味などないようなものだったけれど。  表示されたのは、美園が最後に書き込んだ後の、掲示板のログだった。
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