<第二話・劣>

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――大学のサークルなんて所詮お遊びかもしれないけど……でも、ここで認められないようじゃ、プロとしてやってくことなんかできっこないんだから!  確かに現地調査をサボったレポートは出してしまったが、それはテスト期間と重なってしまってどうしても調べに行く時間がなかったせいである。題材にしたのが遠く離れた九州の怪談だったというのも、チョイスミスであったのかもしれないが。  それでも、現地に行かずとも臨場感を感じてもらえるような、それくらい技巧を凝らした記事には仕上げたつもりだったのである。それを、あの部長と来たら。最後まで読みもしないで切り捨てたのだ。美園にとっては、屈辱以外の何物でもない。 ――見てろよ!絶対にあいつの鼻を明かしてやるんだからぁ!  適当にいくつもの掲示板を、タイトルだけ見てクリックしていく。 【ガチで怖い怪談を集めてみませんか? part1952】 【リアルであった怖い話 part52】 【妙な手紙が届いて滅入ってるんだが part3】 【まだち駅についてどなたかご存じ有りませんか】 【オカ版百物語 第五十三夜】 【異世界に行く方法のマジっほいのを発見したので早速やってみた part2】 【友人が異世界に行くとか言い残して消えたんですが part6】 ――出来れば、田舎の怖い話的なものがいいのよね。因習っていうの?取材しがいがあるし。でもって、出来れば関東近郊で行きやすそうなとこ……まあ、休みもあるし新幹線で行ける範囲ならそれでもいいけど。  そして、カチカチとマウスを鳴らしていた美園の手が止まることになるのである。  目についたのは、一つの掲示板だった。何故だかそれに、酷く目を奪われたのである。  タイトルにはこう書かれていた。 【みかげさま、というものについてご存知の方はいませんか?】
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