<第二十一話・解>

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 では、どうやってみかげさまは、生贄をこの村に呼び寄せるのか?名前を口にしてもらうためには、“みかげさま”という存在を知らせ、興味を持ってもらわなければいけない。昔なら手紙やら新聞やら伝聞やらというツールを使ったのかもしれなかった。だが、若い生贄を徴収したいと思うのなら、時代に即したやり方を選ぶ必要がある。  つまり、インターネットの利用。一時期よりかなり廃れたとはいえ、まだ大型掲示板を見る者は少なくない。むしろ、昔以上に面白半分興味本位の者ばかりが見る状況にあるのかもしれない。だから、あんなスレッドを立てた。死んだ記者の女性の弟を名乗ることによって、面白半分でオカルトに興味を持った――行動力のある若者が、村までやってくることを狙って。  実際、その通りになった。自分と琴子は、誘われるまま村に戻ってきてしまった。過去琴子は何度も笹下村に足を運んでいるものの、みかげさまの存在を知らなかったから名前を口にすることもなく――生贄に選ばれることもなかったゆえに無事だったのだ。 ――そういえば、お母さんは……この村に何度か帰ってはきたけど、そのたび妙にピリピリしてた気がする。多少不便はあるけど穏やかでいい田舎だと思ってたし、どうして東京に出ることにしたんだろうってちょっと不思議ではあったけど。  きっと母は、此処で行われていることを知っていた。そしてそのおぞましい儀式と決別するために、この村を出ることを選んだのだ。  たとえ村の住人になることで、生贄に選ばれてしまう可能性があるとわかっていても、だ。 ――もしかしたら、みかげさまの名前を目にした人間は、やがて本人の意思とは関係なく……村に行くように仕向けられてしまうのかもしれない。  美園ははっとする。だとしたら、もしかして琴子は非常にまずいことをしてしまったのではないか。  *** ●こっちゃんでっす@kocchan1515 ちょっと今大学で調べ物をしているので、知ってる人がいたら教えて欲しいです。 T県で、“みかげさま”っていう神様について調べてます、サークルのレポートです。 何でも、大昔捧げられた生贄の名前がそれであるそうな。大きな災害があったっていうけど、どんな災害かもわからなくて困ってます。  *** ――そうだ、琴子……ツニッターに、書き込みしてた、みかげさまの名前!あれ、もう大多数の人の目に入っちゃったってことなんじゃ……!
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