<第十二話・繋>

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<第十二話・繋>

 こいつは本当に何をしに来たんだか。琴子はやや呆れつつ、みっともない格好で寝落ちた美園を布団まで運んでやった。  お風呂には既に入っていたからいいとはいえ、とんでもなく酒臭いし服ははだけているしの情けないどころではなく情けない格好である。いくらなんでも女捨てすぎだろ、と言いたい。二日酔い確定コースだが、それでも吐かなかっただけマシというものだろうか。明日どうなっているかはわからないけども。  まあ、自分も、結局本題の“怪談”については美園の祖母から僅かばかりしか聞くことができず、結局殆ど美味しい御飯を食べて雑談するばかりで終わってしまったわけだが(段々御飯が美味しすぎて夢中になってしまい、話どころではなくなってしまったというのもある)。  どうにも真知子は、あまり“みかげさま”について突っ込んで聴いて欲しくはないらしい。村の大事な守り神について、あまり根掘り葉掘りされたくないというのもわからないではないが――ここまで頑なであると、かえって人間好奇心が湧いてしまうのだが。  同時に。 『何度も言うようで悪いけど。できればレポートにはして欲しくないんだよね、あの神様についてのことは。どうしても書くなら、神様の名前はどこにも記載しないでおくれ。それくらい、名前っていうのは大事なもんなんだよ。そこには魂が宿る、呪いが宿る、そういう人もいる。そしてこの村では、名前というのは本当に洒落にならないものだから……』  ネットで調べることはできるが、図書館は明日にならなければ開いていない。なんだか、クトゥルフ神話の卓上ゲームでもやっている気分になってきた。あれだ、持っている技能をフル活用して、事件の調査をしていくという。ダイスロールで技能に成功すれば情報が得られ、失敗すれば得られない。時間を無駄にして終わる。現実もゲームも、そのへんはあまり変わることではないのかもしれない。  イビキをかいて寝ている美園は、ちょっと電気をつけたくらいでは起きる気配もない。むしろ一回起きてもう一回顔でも洗って来いと言いたいところであったので、琴子は容赦なくあてがわれた和室の電気をつけっぱなしにしていた。暗い中でスマートフォンを見続けるのも目に悪そうだから、というのもある。布団の上に座り、少し前にツニッターに書き込んだ内容への反響を見ていた。  料理の写真と絵の写真を、ツニッターにちょこちょこ上げている琴子である。いいね中毒というわけではないし、反響があればいいやくらいの軽い気持ちでやっているだけだが、それでも千人程度のフォロワーは存在しているし、相互フォローも非常に多い。そこそこの人数と、日頃のちょっと楽しいこととか好きなドラマの話題を共有するのが好き、そんなユーザーの一人だった。ゆえに、大量のフォロワーがいるというほどではないものの、話題を投下すれば反応してくれるくらいの仲間はそれなり程度に存在するのである。
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