玖賀の存在

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玖賀の存在

「掻き出しても、掻き出してもでてくる……玖賀は僕を孕ます気か?」  藤は中に指を入れ、玖賀が吐き出した白濁を掻き出していた。残っていると、お腹を下すからだ。何回注ぎ込まれたのか、思い出せない。理性を忘れた玖賀は酷かった。 「はぁ、もう疲れた……さすがに一晩中起きていたからしんどいや」  藤は布団に寝転がる。藤の腰には玖賀が抱きついていた。藤が動けば、さらり、と真白い長髪が流れている。藤は玖賀の顔にかかる白髪をのけた。 「玖賀の様子が落ち着いたら、陰陽寮に行くか」  大きな欠伸をして、藤は眠った。自分が家族よりも玖賀を選ぶ日が来るなんて思いもしなかった。 *** ――数時間前。  母親の目線が酷く痛い。蔑むような目線に、藤は悲しくなった。 「いや、あのね。分かってはいたけど、実際に言葉で聞くと…ねぇ」  母親は言葉を濁すが、言いたいことは言わなくてもわかる。 「いや、母さんの反応は正しいよ」  椿は母を擁護した。同じく侮蔑の目線をされる。母親を守るような椿の素振りに、藤は一刻も早くその場から消えたくなった。 「久しぶりだね、藤。鬼に殺されなくてよかったよ」  当の本人はあっけらかんとしている。 「深浦さんの方こそ、お元気そうで何よりです。語弊のある言い方は困りますけど」  陰陽寮がここに来る理由が分からなかった。確かに藤の身柄は監視されている。それなら、もっと早く接触してくるはずだ。このタイミングでの接触は何か企みがある。そういう組織だ。 「藤の家族の身柄は陰陽寮が引き取ることになった。政府がいらんことをしてくれたお陰で、藤の家族に迷惑がかかってすまない」  深浦は獅堂を見る。獅堂はフン、と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。敵対する組織とあって、二人は互いのことを知っているようだ。 「藤、家族に陰陽寮のことを案内するといい」  深浦はついてこいと、言わんばかりに身体を翻した。母親と椿は陰陽寮の部下に誘導されている。藤も後を追おうとした。だが、あることが引っかかって動けない。 「でも……」  家に置いてきた玖賀が気になって仕方がない。ここからまた陰陽寮に行き、帰るとしたらどれぐらいの時間がかかるのだろうか? 「どうした、藤」  深浦はついてこない藤を見る。 「あ、えっと……」  玖賀のことが気になり始めていることに驚いた。家族のことよりも玖賀の存在が大きくなり始めている。  日が昇り、神社に太陽の光が差す。 「……任務があるから」  前髪を触りながら、返事をする。深浦さんは話に合わせてくれるのだろうか。 「そうだな、陰陽寮の案内は部下に任せるとしよう」  深浦さんは母親と椿を連れて神社を去った。 「ついていかなくてよかったのか」  隣にいた獅堂が指を指す。 「ああ、家に帰らないと玖賀の様子が心配だ」  言葉にすると、恋人のようで妙に照れる。自分の体温が上がったのがわかった。 「ふうん、鬼の虜だな」  からかうように獅堂が藤の頭を撫で回した。 「その言い方はやめろ、放置するとめんどくさいだけだ」  ***  家に帰ると、昼間なのに真っ暗だった。玖賀は日に当たりたくないのか、窓は全て閉め切っている。カビが生えそうな空気だった。 「昼でも、お化け屋敷みたいだな」  中の灯りはついていない。玖賀の姿も確認できなかった。 「玖賀……?」  おそるおそる真っ暗な空間に声をかけてみる。藤の声が響くだけで、シーン、と静まり返っていた。おかしいな、いつもなら飛びついてきそうなのに。  藤は一歩、家の中に入る。後ろ手で玄関の扉を閉めれば、背後から口を塞がれた。 「んんっ……!」  頬に長い爪が当たる。玖賀だ。  無理矢理、玖賀に首を振り向かされる。接吻をし、グチュグチュ、と舌をかき回される。鼻で息をすることを忘れ、口の中に残っていた酸素を吸い取られる。  酸欠で頭がクラリ、とした。 「ハァ、ハァハァ……」  意識を失う寸前に、玖賀から解放される。だが、すぐ口で塞がれた。身体は弄られ、隊服が乱れていく。下半身に触れられると、ドキリ、と心臓が跳ねた。  玖賀の長い爪が中を傷つけられやしないか、と不安になる。心配をしていれば、玖賀の手が藤の陰茎を掴んだ。器用に、指の腹で藤の陰茎をこねくり回す。小指で根元を刺激し、親指の腹で先端を弄られた。 「はぁ、はぁ……ぁ」  玖賀の逸物が尻の割れ目に当てられる。はやくいれたい、と言わんばかりに押しつけられた。 「ンッツ……ッ……」  何度出されたのか、把握できない。ただ、わかるのは漏らしたようにグチョグチョになっていること。玖賀がずっと接吻をしてくること。藤の体内にある粘液や体液を一つ残らず奪い取ろうとしてくる。  たった、一晩いなかっただけで不安定すぎだろ。  帰って来てから言葉を発しない玖賀。やはり、人ではなく鬼だ。
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