心中した鬼

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心中した鬼

 山の奥に紅葉が見える。  藤は自然豊かな森で紅葉の赤色に囲まれていた。強く風が吹いて紅葉の落ち葉が舞い踊る。入り口には古びた木の看板があった。そこには、もみじ神社と掘られている。 「甘い匂いがする……」  藤がもみじ神社に着いてから、ずっと匂いが(まと)わり付いていた。 「早く行け、時間が勿体(もったい)ない」 藤は後ろから小突(こづ)かれる。藤の後ろには数人の男がいた。彼等は陰陽寮(おんようりょう)の人間で、陰陽師とセンチネルを監視する管理者だ。  陰陽師というのは、センチネルを制御するもの。  センチネルは、特殊な能力を持ったもの。  陰陽寮は、センチネルと陰陽師を管理するもの。  藤は陰陽師の素質アリと、この見知らぬ土地に連れて来られた。 「はい……」  藤の目線の先には、百段ぐらいの階段が見える。 「進め」  階段を登ることを躊躇(ちゅうちょ)していれば催促(さいそく)された。 「はい……」  陰陽寮に逆らうことはできない。逆らえば反逆者として刑に罰せられる。そういう世界だ。  階段を全て登り切ると、本殿が見えた。中に入るよう(うなが)され、履いていた靴を脱いで上がり込む。  階段を上り、祭神を祭る裏側へまわった。  裏側へまわると地下に繋がる隠し扉があった。陰陽寮の人間はその扉を開けて、藤に中へ入るように言った。 「明かりはないんですか?」  扉の先は、一寸先も見えない闇。明かり無しで足を踏み入れるのは勇気が必要だった。 「明かりを点けることは禁止されている」  陰陽寮の人間は怖がる藤を置いて先に進んだ。藤が逃げ出さないように間を挟み込む徹底ぶりだ。  藤は前を歩く陰陽寮の人間の後ろについて、階段を下りる。  階段は木でできており、かなり急だ。踏み外さないように壁に手をつく。  階段を下りきると、圧迫感を感じるほど天井は低かった。 「切なくて甘い匂いがする……」  藤は紅葉の匂いではない、何かの匂いに反応した。外では感じることがなかった切ない匂いが混じりだす。この匂いは地下の奥から漂ってきているようだ。 「やはり、相性がよさそうだな」  陰陽寮の人間は嬉しそうに話している。藤はいい気がしなかった。  階段を下りて廊下を進む。真ん中ぐらいまで進んだところで壁に違和感を感じた。 「冷たっ……」  金属の装飾だろうか。壁ではないものが手に触れた。立ち止まると、陰陽寮の人間も立ち止まった。 「何の模様かわかるか?」  陰陽寮の人間が藤に尋ねる。藤は金属の装飾をペタペタと触り形を把握しようとした。 「長細い形が均等……花びら……かな。中心は円をしたものだ」  藤はこの先に何かがいることが、匂いでわかっていた。この先から、切なくて甘い匂いが漂ってくる。その匂いの正体を知りたかった。 「菊……ですか?」  藤が答えた途端、壁が動いた。暗闇でわからないが、目の前に空間が現れたようだ。奥からビュウっと風が吹いてくる。あの切なくて甘い匂いに包まれた。 「なんだ、この匂い」  藤は匂いで頭がクラクラしてくる。思わず頭を抱えた。 「行くぞ」  藤の異変を気にせずに、陰陽寮の人間は先へ行こうとした。藤は軍服の袖で鼻を覆い、陰陽寮の人間に付いて行く。  藤たちが菊の空間へ足を踏み入れた途端、端に置かれた行灯の明かりが手前から奥へ順番に灯されていった。 「なんだこれ……」  藤は怖くなって後ずさる。それを阻むのは陰陽寮の人間だ。 「匂いの正体が気になるんだろう?」  藤は息を飲みこんだ。匂いの正体に興味をそそられている。好奇心には勝てない。  長細い廊下を進んだ先に障子が見えた。  陰陽寮の人間は躊躇なく障子を開ける。藤は間からおそるおそる覗いていた。  そこは和室だった。家具とかはなく、生活感は一切ない。あるのは畳に敷かれた布団だけ。布団の中に、誰かが寝ている。 「誰……?」  藤が尋ねても陰陽寮の人間は何も言わない。藤は惹き寄せられるように、押しのけて和室へ入った。  おそるおそる顔を覗き込もうと布団に近づく。緊張と恐怖で心臓の音が高まっていた。 「ヒッ……!」    寝ていたのは鬼だった。白髪で頭に二本の角が生えている。生きているのか、死んでいるのかわからないほど、生気がない。 「何をしている。さっさと役を果たせ」 「わっ……!」  陰陽寮の人間に後ろから押されて藤はこけた。鬼の身体にのしかかる。 「す、すみません!!」  慌てて藤は鬼の身体から離れた。上に乗ったのに、なぜか、鬼は寝たままだった。なにも反応を示さない。 「反応するわけないだろう。昏睡状態ということを忘れたのか?」  陰陽寮の人間はあきれた様子だった。 「わ、わかっています」   藤は鬼の着物に手をかける。薄緑色の生地に灰色の帯。起きませんように、と心で念じながら灰色の帯をゆるめた。  鬼が穿いているふんどしが現れる。  藤はふんどしをゆるめて、中のものを取り出した。もちろん、反応はしていない。  昏睡状態に陥っている鬼を確認した。ごくり、と息を飲みこみ、鬼の逸物をパクりと口に咥える。  咥えても生気は感じられなかった。舌を使って一生懸命に奉仕をする。すると、かすかに鬼が動いた。ピクリと指先が反応している。  藤が咥えている逸物も少しずつ熱を帯びてきた。怖くなって口を離す。銀糸が鬼の着物に落ちて色が変わった。 「ハァハァ……」  恐怖に押されて息をするのもままならない。いつも以上に藤の息は浅かった。  布団に陰陽寮の人影が映る。  藤の陰陽師としての役目は鬼を昏睡状態から目覚めさせること。だが、昏睡状態の鬼を起こすには、セックスをする必要がある。 「み、見守られながらって……ちょっと……」  藤に破廉恥(はれんち)な性癖はない。顔を赤らめて陰陽寮の人間を追い出そうとする。 「安心しろ、我々は何度も見慣れている」  藤の思いは空しく拒否された。陰陽寮達は障子を閉めようとする様子もない。 「いや、それはそれでどうかと思いますけど……」  話を引き延ばそうとする藤に陰陽寮達は軍刀を向けた。藤は両手を上げて降伏する。 「わ、わかりましたから……刀を収めてください」  藤は支給された軍服のズボンを脱いだ。  陰陽寮達に背中を向けて、鬼にまたがる。膝立ちになり、鬼の逸物の上で蕾をほぐす。  陰陽師の身体はセンチネルを癒やせるように進化していた。たとえ、通和散ローションがなくても蕾に触れれば、蜜があふれでてくる。 「はぁ、はぁ……これぐらいかな……」  指に伝う蜜が鬼の逸物にかかった。鬼の身体が藤の蜜に反応して、また動く。 「め、目覚めた瞬間、襲ってこないですよね……?」  藤は怖くなり、後ろで見張っている陰陽寮達に振り向いた。 「安心しろ、そのために我々がいる」  陰陽寮達は刀を構える。その行為は眠る鬼よりも、藤に対して続きをしろと脅しているようだった。  藤は向けられた刃の恐怖で萎え、昂る鬼の逸物にゆっくりと腰を下ろす。 「んっ……」  くぷん、と先が入った。藤の蜜が鬼の逸物を包む。 「全部入っていないではないか、さっさとよこせ」  鬼が目覚めた。藤が身体を仰け反らせるよりも先に、鬼が藤の腰を掴む。そのまま下へ押し込み、藤は鬼の逸物全てを飲みこんだ。 「あぅ……!」  感じたことがない刺激に藤自身が反応する。 「嫌いな色の目だな」  鬼は身体を起こして、藤を押し倒した。藤は必死に受け身を取り、怪我を免まぬがれる。はらり、と鬼の長髪が顔をくすぐった。 「もっと力をよこせ」  鬼は藤に接吻キスをした。藤の口の中で鬼の舌が(うごめ)く。少しでも多く藤の体液と触れようとしていた。 「あふっ……んっ……」  藤は鬼の強すぎる力に圧倒されていた。抵抗しようとも、両手は鬼に押さえつけられている。下半身は鬼に貫かれ、力が入らない。呼吸もろくに出来ない状態だ。  鬼は藤の中に吐精した。それと同時に藤も吐精する。  鬼は接吻をやめて、こぼれた藤の白濁をぴちゃぴちゃと舐めた。じゅるり、と残さず藤の白濁を綺麗に舐めきる。  鬼が逸物を抜くと、藤は初めての逢瀬に失神している。 「相変わらず、弱いな」  鬼は着崩れた着物を整えた。そして、藤にズボンを穿かせようとする。 「我々がやろう」  黙っていた陰陽寮の男達が鬼からズボンを奪い取った。 「玖賀よ、目覚めて早々悪いが、我々と一緒に来てもらおうか」  玖賀と呼ばれた鬼は陰陽寮の男達の存在を知っているようだった。返事はしないが鼻をフン、と鳴らして承諾する。  玖賀はズボンを穿いた藤を肩にかついだ。 「今度は裏切らないだろうな」  玖賀は陰陽寮達を睨み付ける。過去に何かがあったようで警戒しているようだ。 「ああ、今度は従順なやつだから大丈夫だ」  陰陽寮達はニヤニヤと怪しく笑っていた。 ***
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