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溶かされた氷塊の海。真っ赤な日差しで照らされた錆びた鉄の街。所々にある建物に取り付けられた鋼鉄の風車が今にも暴れ足りない風を受けて回っている。世界は濁った魚の目のように空気が汚染されていた。
この街には老人が一人だけ住んでいた。
なんでも、よぼよぼの齢九十だそうだ。
他のみんなは、すでにこの街はもう駄目だと言って去って行った。
老人だけが、たった一人この街に残っていた。
「後の子供たちのために」
そう老人は言っていた。
そう、彼はこの街で一人畑を耕していた。
これから来るはずの少女と子供たちのために。
「子供は誰もが未来を担っているんだ。そんな小さな命を零さないために、掌を広げよう。きっと、いい食べ物が育ってくれて……」
そう言った老人は、そこで倒れこと切れた。
一人、畑を耕していた時に……。
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