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捕獲
「千夏ちゃん?おばさん何処にいるの?」
後ろから来たお兄さんに聞かれるが、いる訳がない。
私を閉じ込める優しい優しいあの人を、私は置いて来たのだから…。
申し訳無いと思う。
優しくて暖かいあの人、でも、このキラキラをもう少し見ていたい。
千夏はまた先へと足を進めた。
キラキラは手を伸ばせば掴めそうだった。
思いっきり手を伸ばした。
「千夏!!」
あの人の尋常じゃない声が聞こえた。
「俊くん?ありがとう。お昼寝してると思ったらいないんだもの。びっくりしたわ。道路もあるのに…まさかこんなとこまで…。」
後ろから捕獲される。
ジタバタと手を動かしても、簡単にすっぽりと腕の中に入れられてしまう。
「うぅ〜〜〜〜…!!」
不満をアピールしてみたが、
「めっ!ブッブーに勝てるの?」
の、一言で黙らされてしまった。
そしてお菓子を手に掴まされる。
いわゆる……買収だ!
が……美味しいから嫌では無い。
今日のところはここまでとしよう。
お菓子をもらえたし、靴が自分で履けた。
そしてここまで来れて、キラキラを見られた。
捕獲されたのが不覚だが……隣のお兄さんにも会えた。
このキラキラの中で…。
千夏2歳……最初の冒険は6分30秒。
公園までの距離、550メートル。
かなり遠くまで来たものだった。
ーーーー 完 ーーー 2019 、11、3
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