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俺たち兄弟は、間違いなく顔はいい。
金もある。
仕事もできる。
それ目当てで寄ってくる女は、少なくはない。
律にかなりしつこくした女性がいて、その女性と手を切る手伝いを、先日してやったのだ。
『……、あの時は、瑛もいい思いしたって、聞いたけど?』
その切り返しには、返す言葉もない。
まあ、手伝いはしたけど、あなたでもいい、と言うから?
ちょっとした、摘み食い?
「でも、協力、したじゃん。今回は助けてよ。」
恐らく、意識して、ではなくかなり深いため息が、受話器の向こうから聞こえてきた。
『……で?』
「代わりに出てくれるだけでいいから。断るのは、俺が終わった後に断るから。」
『絶対に自分で断れよ?俺は行くだけだからね。』
「それだけで充分!」
『あと、これであの時の借りはなしだから!むしろ、今回の件も貸しにしたいくらいだよ。』
「貸しでいいよ。」
律には言わなくても分かる、こういう所が瑛は実は気に入っている。
本人はどう思っているか、分からないが。
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