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「いつ、ご結婚されるおつもりなのかしら?」
「えー…と…いつかなあ…いつか…?」
明後日の方向を見ながら、回答する絢音だ。
「そんないつになるか、わからないようなこと、待っていられません!」
その回答にさすがに、母が声を荒らげた。
わーん、お母様が怖いよー。
「琴音ちゃんはどうなのよ?」
そうだ!自分だけのことではない。
絢音がお年頃なら、琴音だってお年頃なのだ。
隣にいた双子の妹の琴音が、ん?と首をかしげた。
顔は、怖いくらいに似ているけれど、性格は全く違って、お転婆な絢音と違って、琴音はおっとりしている。
今も、綺麗な仕草で、ガトーショコラを口に入れていた。
「琴音ちゃんは心配ないもの。むしろ絢音ちゃん、あなたは早くお嫁さんになる事を考えてくれないと困ります!」
嫁に行かなさそう…って思われているんだろうか…。
当たらずとも遠からず、だ。
行かなくていいものなら、嫁になんて行きたくない。
男なんて嫌いだ。
知らないのに、図々しく声をかけてきたり、要らないのに、物を押し付けようとする。
靴箱にいらない手紙を入れたり、誕生日の日に自宅前に、人がいた日には、恐怖しか感じない。
だから、絢音は、彼氏なんてものがいた試しはないのだが、逆に、琴音はきちんと以前は、お付き合いしていた人がいた。
自宅の前まで、制服の男の子に送ってもらったりしていたのを見たことがある。
そういうのを見れば、いいなあとは思う。
けれど、いざ、自分がそれをしようと思うと、竦んでしまうのだ。
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