脱走

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絢音は抵抗したいけれど、どこかに通報されても困る、と思い、大人しくしていた。 男性はそのまま、地下の駐車場まで行って、一台の車の前に立つ。 「乗って。」 ええ…?! ま、まさか、通路にいただけで、警察とか…行かないよね…。 「いいから、乗って。」 絢音は、車には大して詳しくない。 だから、彼が乗って、と言った車が、イタリア製の高級車とは、気づかなかったのだ。 「あの…!ごめんなさい。本当に誤って入ってしまっただけで、悪気はなかったんです。」 「武田さん?」 「はい。」 「武田絢音さんかな?」 絢音は自分の名前をフルネームで呼ばれる。 なぜ、知っているのだろうか。 予約で名前を知っている、ということなのか? 「はい…。」 そう返事をすると、彼は満足そうににっこり笑って、車を出した。 そのまま、ホテルを出てしまう。 絢音の頭の中は、軽いパニックだ。 なのに、彼はとても楽しそうで。 てか、ホテルの従業員じゃないの?! 「観覧車は好き?」 「はあ?!」
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