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警戒警報発令中
その感覚は、急に瑛に肩の力を抜けさせる程のものだった。
どんな子なんだろう。
二人きりで、なんの先入観もなく、話してみたら、どうなんだろう。
何となく、二人きりになれそうなところで、ゆっくり話が出来そうなところ…で、ふと思いついたのが観覧車だったのだ。
絢音は、とても、素直な性格のようで、思っていることが全部顔に出る。
今はこんな風に、警戒警報発令中みたいな顔をしているけれど、心を許して笑ってくれたら、もっと可愛いような気がした。
そんな顔を見たいかも…と思う。
「怪しい者じゃないから、安心して…っても無理か。君のお父さんを知ってる。仕事で接点があるんだ。」
そう言われて絢音は息を吐く。
父の取引先の人か…。
瑛の言葉を聞いて、恐らく無茶はしないだろうと思って、先ほどよりは少し安心した絢音だ。
「絢音ちゃんは、なんであんなところにいたの?」
「えっと…本当は、…お見合いだったんです…。」
「逃げたの?」
こくん、と絢音は頷いた。
「先方は待ちぼうけ?」
「いえ。妹を身代わりに…。」
「は?!っ…。」
くつくつと瑛は肩を揺らしている。
そんなに可笑しいですかね。
「そうかあ…妹さんが、今、お見合いしてるんだ。」
「まずいでしょうか…?」
「ま、いいんじゃないの?しかし…身代わり…ね…。」
瑛はまだ、くすくす笑っていた。
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