エピローグのその前に

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「瑛さん…、心臓、ドキドキ言ってます。」 「絢音の?」 「いえ…瑛さんの…」 「カッコ悪…」 「どうして?」 「慣れている、なんて思われて、カッコつけてても、好きな子を抱きしめたらドキドキしちゃうからだよ。」 「なら、私はもっとカッコ悪いです。」 「どうして?」 「だって、この、聞こえる瑛さんの心臓の音よりも、私の方がもっと、どきどきしているもの。」 ──全く、この子は…… ふんわりと柔らかい絢音の頬に指で触れる。 また、摘まれる、と思ったのか、とっさに目を閉じた絢音の顔を仰のかせて、唇を重ねた。 「んっ…瑛さ…」 華奢なウエストを抱き寄せて、深く、深く唇を重ねる。 「瑛…さんっ…」 以前抱き締めた時とは違う、甘い抵抗。 抵抗というよりも、しがみつかれている、に近い感じに嬉しくなる。 「あ……」 口の中を探られて、聞こえた甘い声に瑛は安心した。 怖がらせたくはないから。 切なげな表情と、潤んだ瞳、ほんのりと色付いた頬を確認する。 「可愛いな、絢音。大丈夫か?」 「はい…。あの…、もっと、って言ったら、はしたないでしょうか…。」 「とんでもない。喜んで。」 ふっ、と笑い、絢音をしっかりと腕の中に抱きしめて、瑛はそっと唇を重ねたのだった。
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