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エピローグ~彼らのthe one~
「何て良縁なのかしら!お母さん、可愛い娘が欲しかったのよ!!しかも双子だなんて!!」
東条家の食卓……
まだメインが終わっていないというのに、落ち着きなく母親が立ち上がってそう言った。
喜びを喜びのままに口にする母親は、息子達の思ってもいない報告に
居ても立ってもいられない様子だ。
母親があの二人を気に入らない訳がなかった。
母にしてみたら、そもそも瑛がお見合いをしてくれたことも、驚きであったろうし、さらに、お相手は望んでいた良い家柄、である武田家の絢音なのだ。
その上に、親には、それが縁で…、と言ってある律のお相手も同じ武田家で、母にしてみれば、思ってもみない、ダブルのおめでた話である。
父親が穏やかに頷く。
「新しいボトルを開けようか」
父は父なりに、上機嫌だ。
「顔合わせには、どのお店がいいかしら、結納に……ああ、どこでお式をしましょうか」
浮かれたような、声が聞こえて、
「お母さん……」
放っておけば、どこまでも話しかねない母親に、やんわりと瑛が声を上げて、止める。
「ああ、そうね、つまらないわね、男側なんて」
「ですから、可愛い娘が一度に二人も出来るのでしょう?」
律が柔らかくそう言うと、母親は少し涙ぐんだ。
そんな母を見ていて、あの、人の心の機微に聡い絢音なら、この母親とも上手くやってくれるのだろうと瑛は思う。
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