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きっと、
絢音には真っ白のプリンセスラインのウェディングドレス……可愛いだろうな。
琴音には、趣のある白無垢……綺麗だろうな。
生まれて初めて、あの日、無理にでも見合いを押し進めた母の強引さに感謝したのだった。
「母親の言うことは聞くべきだな」
あの時、母が半ば強引に、あの場をセッティングしなかったら、瑛は絢音に出会うことはなかった。
母の思った形では、なかったかもしれないが、出逢いのきっかけであったことは、間違いないのだ。
「ああ、俺もそう思っていたところだ」
瑛と律はお互いにだけ聞こえる声でそう言うと軽くグラスを合わせた。
こんな顔をした瑛を律は初めて見た。
瑛もまた、こんな顔をした律を見たのは初めてだった。
「お前、ニヤけすぎ」
揶揄う口調で、瑛が律に向かって言う。
「はぁ?鏡じゃねぇの」
少し掲げた、グラス越しにお互いを見る。
シャンパン越しに透けて見えたのは、相手の顔か
それとも……グラスに写った自分の顔か
そこにあったのは“幸せそうな顔”
ふっ、と笑った。
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