エピローグ~彼らのthe one~

4/5
3119人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
「何て良縁なのかしら!!あんなイケメンの息子が出来る、しかも双子だなんて!!」 武田家の食卓… いつになく高い母親のテンションのその訳は…… 絢音の見合いが成功した事に加え 同じく律と想いを交わしていた琴音の報告のせいである。 この上ない良縁であることは間違いない。 「だからと言って、一度に二人とも……」 父親は、心中複雑、といったところだ。 「寂しいのは、分かりますわ、だけど……これ以上の良縁など、ありませんよ、あなた」 「……分かっている、だが、それとこれは……」 父親の言葉を最後まで聞かずに、母親は立ち上がった。 「ああ、忙しくなるわね、お着物かしら、それとも……その前にああ、あちらの奥様とも相談しなくては……」 「ねぇ、大袈裟にしないでね、とても恥ずかしいわ」 琴音に窘められて、母親は漸く腰を落とした。 両親があの二人を気に入らない訳がなかった。 「ありがとう、お母様」 絢音がそう言うと、母親は 「嫌だわ……」そう言って涙ぐんだ。 「良かったね、絢音ちゃん!」 「琴音ちゃんもね!」 生まれて初めて、あの日、無理にでも見合いを押し進めた母の強引さに感謝したのだった。 「やっぱりお母様の言うことは聞くべきだわ」 「聞かなかったから、琴音ちゃんも律さんと出会えたのでしょう?」 絢音と琴音はお互いにだけ聞こえる声でそう言うと肩をすくめた。 絢音ちゃんの嬉しそうな顔!! 琴音ちゃんの嬉しそうな顔!! 「顔、ゆるみすぎー」 「あ、絢音ちゃんだって!」 「鏡じゃないの?」 「え、そうかもしれないね」 そこにあったのは“幸せそうな顔” クスクスと二人で笑う。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!