エピローグ~彼らのthe one~

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「何て良縁なのかしら!!あんなイケメンの息子が出来る、しかも双子だなんて!!」 武田家の食卓… いつになく高い母親のテンションのその訳は…… 絢音の見合いが成功した事に加え 同じく律と想いを交わしていた琴音の報告のせいである。 この上ない良縁であることは間違いない。 「だからと言って、一度に二人とも……」 父親は、心中複雑、といったところだ。 「寂しいのは、分かりますわ、だけど……これ以上の良縁など、ありませんよ、あなた」 「……分かっている、だが、それとこれは……」 父親の言葉を最後まで聞かずに、母親は立ち上がった。 「ああ、忙しくなるわね、お着物かしら、それとも……その前にああ、あちらの奥様とも相談しなくては……」 「ねぇ、大袈裟にしないでね、とても恥ずかしいわ」 琴音に窘められて、母親は漸く腰を落とした。 両親があの二人を気に入らない訳がなかった。 「ありがとう、お母様」 絢音がそう言うと、母親は 「嫌だわ……」そう言って涙ぐんだ。 「良かったね、絢音ちゃん!」 「琴音ちゃんもね!」 生まれて初めて、あの日、無理にでも見合いを押し進めた母の強引さに感謝したのだった。 「やっぱりお母様の言うことは聞くべきだわ」 「聞かなかったから、琴音ちゃんも律さんと出会えたのでしょう?」 絢音と琴音はお互いにだけ聞こえる声でそう言うと肩をすくめた。 絢音ちゃんの嬉しそうな顔!! 琴音ちゃんの嬉しそうな顔!! 「顔、ゆるみすぎー」 「あ、絢音ちゃんだって!」 「鏡じゃないの?」 「え、そうかもしれないね」 そこにあったのは“幸せそうな顔” クスクスと二人で笑う。
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