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彼女ーーーー、小暮亜実は入学してすぐ、同じクラスで席が隣だったことがきっかけで仲良くなった。
サバサバしていてはっきりと物を言う性格で。打てば響くというか、心地が良いというか。
ポンポン会話ができて気が合う。お互いそう思っていたせいか付き合うまでにあまり時間はかからず、その年の夏に俺から告白して付き合い始めた。
お互い初めての彼氏彼女だったこともあって
何をするのも手探り状態。
でもそれが楽しかったし
何より幸せで。
ずっとその関係が続くと思っていた。
信じて疑わなかった。
このまま結婚するのかな、なんて想像していたほど。
だから、まさかこんな日が来るなんて
当時の俺は思いもしなかった。
“ 別れよう ”
なんでも話してくれる亜実が
進路のことでひとつだけ俺に隠していたことがあった。
それを知ってショックと同時に最初で最後の大喧嘩。それ以降お互いギクシャクして連絡も取らない状態が続いた。
受験生、ということもあったせいで
そのまま逃げるように勉強に没頭して
卒業式の日に彼女がハッキリと
別れの言葉を口にした。
しっかりとした口調だった。
迷いのない瞳に映る俺は
必死に動揺を隠そうとする情けない姿で。
膝が震えて
立っているのもやっとで。
“ わかった ”
本当は今にも崩れ落ちそうなほど絶望感でいっぱいだったのに口から飛び出た言葉は気持ちとは真逆の言葉。
そんな強がりのせいで
この十年死ぬほど後悔した。
どうしてあの時、亜実と別れないですむ方法を考えなかったのだろう、と。
時間が戻ったら、なんて柄にもなくファンタジーなことを考えた。
それでもそんなこと、現実には起こりえなくて。前を向こう、と、これまで何人かと付き合った。
それなりに好きだったし大切にしてきた、と思う。
だけどやっぱり亜実と比べてしまうのは俺の中でどうしても消化できない想いが残っているから、なんだろう。
だから十年経っても彼女の姿を見た途端、こんなにも胸が震える。
文化祭を一緒に回ったこと
体育祭で亜実をお姫様抱っこして走ったこと
自転車の荷台に亜実を乗せて色んな場所に行った
手を繋いで
抱き合って
笑って
泣いて
愛も痛みも全て
彼女から教わったことが
走馬灯のように蘇り、一瞬で俺は当時に戻ったような感覚に陥った。
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