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古びた駄菓子屋の軒下に私は一人立っていた。シャッターに貼られた張り紙は雨風にさらされて元の色を失っている。私の目の前にある水槽の水は濁り苔むしていて、随分長いこと誰も掃除していないように見えた。そして、その中にはもう魚はいなかった。
激しく雨が跳ねる私の足元に小さな魚が一匹横たわっていた。綺麗な尾ひれがついた白い金魚だった。
「君は幸せになれたのかい」
そう呟いた私の言葉は雨の音に掻き消されていった。
ざあざあと雨の音だけがいつまでも耳に残っていた。
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