692人が本棚に入れています
本棚に追加
「ユカリからも何か言ってくれよー。チカイの扱い得意だろ?」
「何言ってんの」
「おい馬鹿。こいつまで巻き込むな」
いよいよ俺にまで突っかかってきたノボルに、番長キレ気味。喧嘩は卒業したとはいえ、キレやすさは変わらない。キレやすいと言っても、なんかスイッチがあるんだけどね。
それにさえ触れなければ、普段は心広く温厚なんだけど。
番長の怒りスイッチに触れたことに気づいていないらしいノボルはいまだに期待の眼差しを俺に向けていた。誤解しないでいただきたい。俺は別に番長を操るだとかそんな裏番的な能力は持ち合わせていない。
でも、こうなったノボルもしつこいしなー…。
うーん、と悩みながら紙パックのジュースに手を伸ばす。
俺が何か言ったところで、番長が喧嘩に参加するとは思えない。
で、ノボルは喧嘩の手数が欲しいと。
「俺がいこーか?」
「はっ!?」
「えー!?まじ!?助かる助かる!むしろチカイよりユカリがいいー!」
「……おいこら」
番長忙しそうだし、喧嘩参加したくなさそうだし、妥協案として、気まぐれに代理を申し出てみる。ズゴゴゴーとジュースを飲み干す俺を、番長はすごい驚いた顔をしたあとに、すごい嫌そうな顔をしていた。
相変わらず、俺にしゃしゃり出られるのは嫌みたい。
「……サキ」
「ばんちょーこわーい。そんな睨まないでよ。しょーがないじゃん、困ってる時はお互い様でしょー?」
「神様ユカリ様!ほんと良いことおっしゃる!チカにも見習っていただきたいくらい」
「お前さっきから調子のんなよ、ノボル。ふざけんな、サキも駄目だ。怪我したらどうすんだ」
「怪我したらどうすんだってアンタ……。抗争だからそりゃ怪我くらいするかも知んないけど、いや、ユカリなら無傷で迎え打てるかもしれないけど……」
だったらお前が来いよ、しぶらずに。ああん?とやたら喧嘩腰に絡んでくるノボルに番長は深く深くため息をついた。しまいには分かったよ……なんて小さく呟く。
「いや、ばんちょーが行くなら俺も結局参加するんだけどね?」
「……分かってるよ。お前ひとりで参加させんなら俺も行ったほうがマシなだけだ」
「やったー!さすが元番長!頼りになるー!さんきゅーな、ユカリ!お前のおかげだぜ!」
憂鬱な顔をしている番長とは正反対に、ノボルはテンション高く俺とハイタッチをかます。いえーい!とバッチリ合わせた掌が離れた時には慌ただしく番長と俺の参加をほかのヤツらに知らせに走っていった。
最初のコメントを投稿しよう!