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クリスマスケーキは絶対。
寒いから皆で鍋を囲むのもいい。
でもチキン食べたいなぁ。
男だらけでイルミネーション見に行って、ラブラブカップルの雰囲気ぶち壊しに行ってもいいかもしれない。
冬の花火ってのもやってみたいな。
そんなふうに、まだ20日もあるのに頭の中はクリスマス一色だった。
番長がバイト休んでくれるって言ってくれたからそれでテンションがあがっているのかもしれない。
街の中も、赤と緑のクリスマスカラーで溢れていたから、ついあてられちゃったのかもしれない。
そんな俺の楽しみをぶち壊すようなセリフを、目の前のこの男が口に出そうとしているのが信じられないくらいだ。
「嘘はダメだよォ、ノボル?」
「ッ…」
「彼女いないことなんて分かってるし、なんでそんなこと言うのかなぁ?」
俺悲しい、なんて笑顔で言えば余計に引きつっていく顔。気温も低く、寒いというのに、ノボルは汗をかいていた。
「で、できたんだよ…」
「じゃあ紹介してよ」
「いや、不良とか耐性ないから、仲間紹介とかはしてない…です…」
「俺が不良顔してるとでも?」
「いやっ!とんでもない!」
自慢にもならないけど、ノボルよりは穏やかで優しそうな顔してると思うけど。いじめられっ子だった頃とは段違いに背も伸びて、顔つきも変わったとババちゃんに褒められたくらいだ。
甘いマスクだってさ。
コースケとキャラ被っちゃう。
まぁ、今はそんなことどうでもよくて。
現在、ノボルと交渉中。
彼女ができたからクリスマスは用事があると嘘をついてまで、参加しない理由がなんなのか吐かせてる途中。
くだらない理由なら、当然参加しますよね?と可愛くおねだりしている。
「みんなして何なの?クリスマスパーティやりたいの俺だけ?」
「…俺もやりたいけど」
「じゃあ参加してよ」
「…デキマセン」
残念極まりないのだが、ノボルに始まり高槻、コースケ、ミツにも振られてる。
用事があるの一点張り。
嘘っぽい理由は吐くくせに、本当の理由は教えちゃくれない。
「サキ、そこらへんにしとけよ。用があるなら仕方ねぇだろ」
「用があるなら仕方ないんだけど、ノボルが俺に嘘つくからさぁ」
「嘘ツイテナイヨ…」
「慣れないことはやめようねー?ノボルー」
さらに距離を詰めて問い詰めてやろうと思ったのに、番長に首根っこ掴まれて無理やり離された。隙ありといわんばかりに脱兎するノボルは、結局なにも言わずにどっか行ってしまう。
「…なにすんの、ばんちょー」
「しつこい男は嫌われるだけだぞ」
「だってぇ…」
用事があるのは別にいいのだ。
番長は確保してるし、高槻たちも今じゃ別の学校に通っているわけだからそれなりに付き合いとかがあるだろう。寂しいけど。
でもノボルのそれはあからさまに嘘で、どうにもこうにも納得できない。
「…見栄はりたかっただけかな」
「かもな」
彼女いないのなんて、うちの学校ほとんどなのに。元中メンバーもいないし、今更?
クリスマスにカップルでいなきゃいけない法律もなけりゃ、恋人いないことが惨めだと決まっているわけでもないのに。
ノボルは確かに年中彼女欲しいと言っているから見栄張りたかっただけなのかもしれないなと無理やりに納得するしかなかった。
「クリスマス、ふたりきりだね?ばんちょー」
「そうだな」
俺はそれでも楽しいからいいけど。
番長はそれでいいのだろうか。
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