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曲がるボールは安定しない。
後半で投げたパワーボールのがスコアよかった。
今度からは素直にまっすぐ投げようと、そんなことを学んだボーリングも3ゲームで終わりボーリング場をあとにする。
「腹ごしらえだっ!」
そう叫んで出たボーリング場。
さすがにもう手は繋がなかった。手が寒いので持参していた手袋をつけた。番長はお子様体温なんだなと改めて思う。
「どこも混んでるな」
「クリスマスだし、休日だしねぇ」
どこに入ろうかとブラブラする。
寒さにやられて飲食店は激混み。普段やってんのかどうかも分からない不思議な喫茶店すら激混み。
致し方なく、ファーストフード店でお持ち帰りにして外で食べることにした。
「午後もなんか行く場所決めてんの?」
「いや、日が暮れるまでは適当にブラブラしようかと。どっか行きたいとこあるか?」
「そうだねぇ」
うーん、と考えながらハンバーガーにかぶりつく。外で食べてるからすぐ冷める。ファーストフード店でホットドリンク頼んだの初めて。
買い物しようにも、俺も番長もなんせ物欲があまりない。大体、みんなで遊びに行った時も、結局帰り道でなんも持ってないのは俺と番長だけだったりする。
いーなーとは思っても買うまでに至らないというか、使い道を考えてしまうと結局ゴミになるなとしか考えられず服とか以外は滅多に買わない。
おかげさまで部屋は殺風景。
「ゲーセン…は、また喧嘩に巻き込まれても嫌だしなぁ」
「…また運動でもいいか?」
「お、なんか良い場所が?」
あそこ、と指さされた場所。
行ったことなかったから、俺は別段なにも考えずいいよーとしか言わなかった。
*****
アホなのか。
「ちょっ…ばんちょー!しっかり手握ってよ!!」
「っ…!!」
プルプル震える足。
油断すればすぐにバランスを崩して倒れそうになる。
そんな俺の両手を支えながら、声を殺して爆笑している番長に、俺も珍しくキレ気味で叫んでいた。
INスケート場。
運動といえば運動。テレビで誰かが滑ってるのを見ていたら簡単に見えるヤツ。
ところがどっこい。
人間に元々氷上を滑るなんて機能は備わっていない。しかも、スケート靴というただでさえ不安定な氷上を不安定な靴で滑るというのだから、そりゃ無理な話である。
滑る、というよりは歩くように進む。片足上げればグラつくし、番長がいたずらに俺の手を引くもんだから足はみるみる開脚してどうにもこうにもならずまた叫んだ。
「ばっ…、ちょっ!ふざけ…っ、」
「ぶはっ!足閉じろよ、サキ!」
「それが出来たら苦労しないよ!!」
つか、股関節死ぬ…っ!
結局、そのまま足を戻すこともできず座り込んだ。なんか上手い人がすぃーっと華麗に俺の横を滑っていった。すいませんね、邪魔して。
はぁー、とため息をつく俺とは対称的に番長はずっと笑ってる。腹抱えて笑ってる。
「…笑ってないで起こしてくださいよ」
じとりと睨めば、爆笑しながら番長が手を貸してくれるけど、どうしろと?立てないんだけど。
どうにかこうにか、もはや番長に全体重を支えてもらいながら立ち上がり壁際に避難する。
てか初っ端壁伝いでもなく、手を引いて滑らせようとするのが鬼である。
番長は初めてじゃないようで、すぃーっと滑っていた。華麗に。超絵になる。
「見てる分には簡単そうなのにな…」
「お前器用だから、どうせすぐ滑れるようになる」
「…ソウカナ」
あまりに予想つかないけれども。
生まれたて小鹿のごとく、足が震えるんだけど。もう壁から手が離せないんだけど。
「ほら、一緒に滑ろうぜ」
「……もうその手には乗らんよ」
そう言ってさっきも、誘われて、手を繋いで、見事に俺だけすっ転んだのだ。氷の上での転倒は痛いし冷たい。しかも行き交うスケート靴に手を踏まれたらと思うとゾッとする。
あっという間に血の池リンクになってしまう。
「とりあえず歩くな、滑れ。ハの字にしてたら、足は開かねぇよ。スケボー乗る時みたいに、片足に体重乗せてスピードつけて滑れば、どうにかなんだろ」
「簡単に言うねぇ…」
「練習あるのみだ」
そう言って、ほぼ無理やり手を取られて壁から離された。今だけは番長より無機物の壁の方が頼りがいがあるのに。
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