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裏庭のカナ
「入寮一週間経たないうちにあそこに入る奴は初めてだぞ、坪倉……」
細マッチョな寮職員の呆れ声を聞かされながら、俺は廊下をずるずる引き摺られていた。親睦を深めるために「いやぁ、俺もカツオみたいに耳引っ張られんのは初めてですよ」と爽やかに言ってみようかと思ったが、親睦より溝が深まりそうなのでやめておく。
昨日晴れて高校生になった俺は当然入学式に出席した訳だが、冒頭の校長の挨拶が長かったせいで早々に飽きた。具合が悪いと式を抜け出し、更に付き添いの保健医に「吐きそう」と言ってトイレに入り窓から脱出。その足で向かったマン喫でうっかり一泊してしまい、これから三年間我が城となる男子寮の入寮式無断欠席はおろか無断外泊となってしまった。その罰としてこの寮名物の「お仕置き部屋」という、何ともヤロー共の妄想を掻き立てる場所に連行されている真っ最中なのだ。
正直耳を把手にされるのはなかなか痛いが、特に抵抗はしない。趣味と実益を兼ねた筋トレは日課だが、いかんせん身体が小さくて喧嘩なんかは大抵負ける。長いものには巻かれているほうが血を見なくて済むのだ。ちなみにトイレの窓を脱出経路に使えたりするから小さいのも嫌いじゃない。
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