裏庭のカナ

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 そこにあったのは、見渡す限りの草原だった。  百八十度、どこを見ても緑の地面が空との境界まで続いている。 「何だこれ……」  呟いた声も緩く吹く風に流されていく。  確かに俺が入学したのはお世辞にも都会とは言えない街の高校だが、いくら何でも視界に人工物が何も入らないなんてこと有り得るはずがない。そもそも寮の前には舗装された道が、向かいにはコンビニがある。学校だってすぐ近くだ。  一体どういうことなんだ。  衝撃で散り散りになろうとする思考に何とか集合を掛けて、この突然の異常事態に説明を付けようと試みる。  超高性能の立体映像か? いや、有り得ない。  北の国からミサイルが飛んできて街が一掃されたとか。いやいやだったらこのおんぼろな寮だけ無傷な訳が無い。  夢オチ? うーむ、可能性としては一番高い。月並みに頬を抓ったら普通に痛かったけど。  いくら考えても納得のいく答えは出ない。 「……こうなったら、現場検証しかないな」
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